研究実績の概要 |
KSHV ORF66は,ウイルス後期遺伝子発現を司るウイルス性開始前複合体(vPIC; viral Pre-initiation Complex)の構成因子の一つだと推測されていた.我々は欠損ウイルスを用いた解析により,KSHV ORF66がウイルス産生およびウイルス後期遺伝子発現に重要であることを明らかにした. 次に,ORF66機能性領域探索,具体的にはvPIC構成因子ORF34との相互作用部位の同定に取り組んできた.その結果,ORF66欠失変異体による結合解析よりC末端側領域が重要であること,さらにORF66アラニン置換体による結合解析よりいくつかのCXXC配列やロイシン重複配列が結合に必須であることが示された.前述の置換体をそれぞれ,ORF66欠損ウイルス産生細胞に導入し定常発現細胞を樹立,ウイルス産生量の回復度を評価するComplementation assayを実施した.ORF34との結合能を失った置換体全てで回復が観察されなかった.一方,結合能を有する置換体では回復を認めた.しかし,一部の置換体では回復は認められなかった.よって,ORF34との結合はORF66が機能するための必要条件ではあるが十分条件ではないことが示された.その他因子との結合もORF66の重要な機能の一つであることが推測される. あわせてKSHV ORF66の3次元タンパク質構造,ホモロジー・モデリング法により,推定モデルを構築し,検討結果と照合した.今回同定したORF66中のCXXC配列は二価イオンである亜鉛を内包し全体構造保持に関与しうること,ロイシン重複配列は分子表面に露出しORF34との直接的な結合に寄与しうることが示唆された. 以上の結果をまとめた原著論文が,Journal of virology誌に掲載された(Watanabe T. et al. J.Virol., 2020).
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