近年、食品および医薬品の安全性評価の際に、動物実験代替法またはヒトでの評価法として、幹細胞より分化誘導した器官を用いた試験法が開発されつつある。しかし、幹細胞の株の種類、維持手法、および分化誘導方法の違いによる樹立細胞および器官について、トランスクリプトームやプロテオームなどの分子生物学に関する基礎的知見が少ない。本研究では、腸組織を標的とし、in vitroで汎用される標準的な幹細胞各株とそれを用いて分化誘導する内胚葉、腸細胞そしてそのオルガノイドの遺伝子とタンパク質発現プロファイリングを行い、その発現の変動等を解析することで、実際のヒトの器官を模する技術の基礎的データを収集することを目的とする。 昨年度まではマウスiPS、ES細胞およびマウス腸管由来細胞等で検証を行ってきたが、未だ最適条件を確立できていない。一方で食物抗原摂取からアレルギー発症の分子メカニズムがよくわかっていないことから、その解明に特化した評価系を検討するために、昨年度に引き続き、腸管パイエル板に存在し、腸内の細菌や消化食物の取り込みなどを介して腸内環境を監視していると考えられるM細胞の効率的な分化誘導条件の検討およびその解析を行った。腸管由来細胞をマトリゲルで三次元培養を行い、RANKLに加え、リポポリサッカライド等の細菌細胞壁成分を作用させる分化誘導方法等を検討し、フローサイトメトリーにより評価を行ったが、in vitroにおいて効率的なM細胞誘導が確認できなかった。
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