プロテアソームはユビキチン化されたタンパク質を選択的に分解することにより細胞内のタンパク質恒常性の維持に関与している。プロテアソームは「不要なタンパク質分解の場」で静的な分子であると考えられていたが、様々な刺激に応じてダイナミックに変動する動的な複合体であることが明らかとなってきた。我々はプロテアソーム可視化細胞を用いたプロテアソームの動態解析により、高浸透圧刺激によりプロテアソームが液-液相分離によって核内に液滴を形成することを見出した。プロテアソームと一過的に結合する分子群のプロテオミクス解析により、ユビキチン選択的シャペロンp97やシャトル分子RAD23B、ユビキチンリガーゼE6APなど複数のプロテアソーム結合タンパク質を同定した。阻害剤やノックダウン実験により、このプロテアソームの液滴形成はポリユビキチン鎖とプロテアソームへの基質運搬を担うシャトル分子の一つRAD23Bに依存することが明らかとなった。さらに、試験管内の再構成系を用いた解析により、4つ以上のユビキチンが連なったポリユビキチン鎖とRAD23Bの2つのユビキチン結合ドメインによるマルチバレント相互作用によって誘導されることが明確となった。さらにユビキチン化基質を探索したところ、リボソームタンパク質が複数同定された。高浸透圧刺激は核小体ストレスを誘導したことから、リボソーム前駆体に取り込まれなかったオーファンサブユニットがプロテアソーム液滴の主な基質であることがわかった。従って、このプロテアソーム液滴は、ストレスに適応するためのタンパク質分解コンパートメントであることが示唆された。
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