研究実績の概要 |
まず、大動脈神経が延髄孤束核領域 (NTS) に投射しているか否かを確認するために、逆行性輸送マーカーであるフルオロゴールドを用いて免疫染色法を行った。フルオロゴールドをラットの NTS に微量注入し、その 24 時間後には大動脈神経におけるフルオロゴールドシグナルの存在が認められた。また、そのシグナルはチロシンヒドロキシラーぜ (TH) 陽性細胞や小胞性グルタミン酸トランスポーター 2 (vGlut2) と一部、共局在していた。さらに、ラットの大動脈神経に対して、eSynI プロモーターの下流に EYFP により標識されたチャネルロドプシン2 (ChR2-EYFP) を発現するアデノ随伴ウイルスを感染させた。ウイルスが感染した神経の種類を同定するため、免疫染色を行ったところ、ChR2-EYFP と TH および vGlut2 の共局在が認められた。これらのことから、大動脈神経の一部が TH 陽性細胞であることが明らかとなった。次に、ドーパ (60 ng/100 nL) を NTS 領域に微量注入した際の降圧および徐脈応答を確認した後、NTS 領域に 473 nm のレーザーを照射 (200 mW, 20-100 Hz, 30 s) を行い、神経を活性化させた時の心血管応答を測定した。光刺激により降圧および徐脈応答が認められ、その応答はドーパシクロヘキシルエステルの前処置により拮抗された。現在は、NTS におけるドーパ遊離の測定系を立ち上げており、1 例ではあるが、光刺激依存性が確認されている。これらの結果から、NTS に投射する大動脈神経がドーパの遊離を介して中枢性の心血管機能調節を行うことが示唆された。
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