本研究はITAMを介した非受容体型チロシンキナーゼの活性化がイオンチャネル型受容体であるP2X4受容体によって促進されるメカニズムの解明を目的としている。P2X4受容体は骨髄由来マスト細胞(BMMC)において、抗原依存的な脱顆粒反応を増強している。このとき、非受容体型チロシンキナーゼであるSykのリン酸化も促進していることを見出している。SykはFcεRI γサブユニットに存在するITAMがリン酸化されるとリクルートされ活性化するが、ATP刺激はSykとFcεRI γサブユニットとの結合を惹起していることを免疫沈降法を用いて見出した。このとき、Lynも同時に沈降してきたことから、ATP刺激はFcεRIのβおよびγサブユニットのリン酸化状態を変化させていると考えられた。 さらに、P2X4受容体はMrgprB2を介したマスト細胞の活性化を促進することを見出した。MrgprB2を介したマスト細胞の脱顆粒、サイトカイン産生、アナフィラキシー症状はP2X4受容体欠損マウスにおいて抑制されていた。阻害剤を用いた実験から、この反応はPI3Kを介した細胞内カルシウムイオン濃度の上昇によって惹起されていると考えられた。
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