研究課題/領域番号 |
18K14927
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
塩澤 裕介 日本医科大学, 医学部, 助教 (60801511)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 遺伝子治療 / ウイルスベクター / 遺伝子発現プロファイル |
研究実績の概要 |
前年度に行った、RNAシーケンシングによる単純ヘルペスウイルス(HSV)ゲノム由来の網羅的遺伝子発現解析により、治療遺伝子組み込み部位の至適領域の候補が同定された。領域ごとに遺伝子発現の持続性に違いがあることが明らかになり、このことから1)治療遺伝子を一過性に発現させたい場合、と2)持続的な発現を目指す場合、のそれぞれに適した領域があることが明らかになった。そこで、これらの領域にGatewayカセットを挿入した。Gatewayカセットを用いることで挿入遺伝子の交換が容易になり、HSVゲノム改変の煩雑さを避けることができるためである。持続的な発現に適した領域はHSVゲノムの反復配列中にあるが、本研究では毒性遺伝子を欠失させる際、junction領域を欠失させないように毒性遺伝子を一つずつ欠失させている。そのため、Gatewayカセットを2コピー挿入することができた。これにより、従来のHSVベクターと比べて2倍の遺伝子発現量が期待できることになる。Gatewayカセットを2コピー持つことで、治療遺伝子を挿入する際の操作が煩雑になることが懸念されたが、1回の組換え反応で一度に2コピーの遺伝子を挿入できるプロトコールを確立した。 現在、これらのベクターと従来のHSVベクターの比較を進めているところである。持続発現用のベクターは従来のベクターよりも生物学的力価が高い傾向にあり、遺伝子導入効率についても期待できる結果が得られている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年末から2019年初頭にかけて、研究棟内での研究室の移転があり、研究遂行に支障をきたした。また、2020年度に緊急事態宣言に伴い研究の遂行に支障を来たした。研究自体についても、単純ヘルペスウイルスベクターの遺伝子改変に当初想定していた以上の時間を要した。これらの事由により、研究がやや遅れることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、治療遺伝子組み込みの至適領域についての検討がin vivoでも同様の結果が得られるかを調べるため、マウスの神経系と肝臓にHSVベクターを投与し、継時的にRNAを抽出し、RNAシーケンシング解析を行う。続いて、標的指向性や感染効率向上につながるHSVゲノムの遺伝子改変を明らかにする。HSVゲノムの改変は一般に、変異導入部位と相同配列を有するテンプレートとの組換えを利用する。そこで、本研究では変異と一対一対応したバーコードをテンプレートに組み込む。作製した多数のテンプレートをプールし、HSVゲノムの改変を行なう。得られた変異HSVライブラリを標的細胞に感染させ、感染前・後のウイルスDNA中のバーコードを次世代シーケンサーにより定量する。標的指向性や感染効率の改善に寄与する遺伝子改変に対応したバーコードは、感染前に比して割合が増加すると予想される。これにより有用な遺伝子改変の候補を抽出する。これらの候補については、該当する遺伝子改変を一つずつベクターゲノムに加え、治療遺伝子の発現量や発現持続性に及ぼす効果を調べる。これにより、ベクターの性能改善に資する遺伝子改変を最終的に明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究棟内の移転により研究遂行に支障をきたしたことと、HSVゲノムの遺伝子改変に時間を要したこと、緊急事態宣言の発令により動物実験に支障をきたしたこと、などの事由により当初予定していた実験に至らなかった。今年度は、前年度に予定していた実験に取り掛かるため、そのための試薬類に充てる。
|