当該年度は、乳酸菌、酪酸菌及びビフィズス菌由来膜小胞の免疫細胞への取り込み機構の解明を行った。その結果、免疫細胞であるマウスマクロファージ様細胞株RAW264.7及びマウス樹状細胞株DC2.4にこれら3種類の膜小胞を添加した際にクラスリン・カベオラエンドサイトーシス、マクロピノサイトーシスを介して取り込まれることが明らかになった。続いて、ビフィズス菌由来細胞膜小胞を蛍光色素で標識後にマウスへ投与し、その体内動態を評価した。その結果、皮内投与されたビフィズス菌由来膜小胞は鼠径リンパ節に集積することが確認された。さらに、投与部位における炎症性サイトカインの発現量が上昇したことから膜小胞が生体において自然免疫の活性化に寄与する可能性が示された。 研究期間全体を通して、本研究で用いたプロバイオティクスはいずれも直径100 nm程度の膜小胞を外部環境へ分泌し、免疫調節作用を有するペプチドグリカンを構成成分として包含することが明らかとなった。さらに、膜小胞が免疫細胞にエンドサイトーシスを介して取り込まれ、その後に免疫調節物質であるサイトカイン産生が増大する傾向が確認された。動物実験からは、投与された膜小胞は主要な免疫器官であるリンパ節へ移行すること、並びに自然免疫を活性化する特性を有することが示された。 これらの成果は、プロバイオティクス由来膜小胞の生物学的意義の解明並びにDDS技術を適用したプロバイオティクス由来膜小胞の高機能化に大きく貢献するものである。
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