前骨芽細胞の細胞増殖・細胞分化は骨組織恒常性維持において重要な役割を果たしている。我々は、マウス前骨芽細胞MC3T3-E1を用いて細胞増殖・細胞分化におけるイオンチャネルの役割を検討した。これまでの検討により、MC3T3-E1細胞には中コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルKCa3.1が機能発現することを明らかにしている。また、生理活性物質であるビタミンDは骨恒常性において非常に重要な役割を果たすが、前骨芽細胞に対する直接作用は十分に検討されていないことから、特にKCa3.1の機能への影響を検討した。本検討において、ビタミンD刺激によりKCa3.1の発現および活性が抑制されることで前骨芽細胞の細胞増殖を一部抑制した。ビタミンD刺激は、KCa3.1の発現制御に関わる転写制御因子AP-1の構成分子であるFra-1の発現低下、およびヒストン脱アセチル化酵素HDAC2の発現低下を引き起こすことで、KCa3.1の発現を抑制することが明らかになった。 細胞分化に対するイオンチャネルの役割を検討したところ、骨芽細胞への分化成熟過程において内向き整流性カリウムチャネルKir2.1の発現が亢進し、骨芽細胞分化の制御に関連することが示された。培養細胞に加えてマウス胎児より単離した中足骨を用いた軟骨内骨化モデルにおいてもKir2.1阻害薬は骨芽細胞分化を阻害した。また、骨芽細胞分化にともなうKir2.1発現亢進メカニズムを検討したところ、microRNA網羅解析やmicroRNA阻害薬、microRNA mimicを用いた検討から、microRNAを介した制御が重要な役割を果たすことが示された。 以上の結果より、KCa3.1及びKir2.1は骨芽細胞増殖及び細胞分化の制御において重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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