マオウ属植物は漢方生薬麻黄として利用されるが日本に自生がなく,中国からの輸入に依存している。しかし,供給は不安定な状態にあり,マオウ資源の確保が急務とされている。そのような状況下で,麻黄を国内生産するためには優良品種を早期に見出し,生産する必要がある。しかし,マオウの総アルカロイド含量が医薬品として利用可能になるまで少なくとも3年は必要であることから,DNAを用いた育種法が不可欠である。本研究課題では,マオウ属植物の分子育種に応用可能な指標遺伝子の開発を目的としている。本研究で得られた成果は以下の通りである。
(1)E. sinica 簡易鑑別法の開発 中国に自生するマオウ属植物と人工交配によって育種した雑種のDNAを用いて検討した結果,3組のプライマーを用いたマルチプレックスPCRの増幅産物を電気泳動で確認する事によって,簡易的にE. sinica と中国自生種及びそれらの雑種を鑑別することが可能であった。さらにリアルタイムPCRを用いることによって,より迅速に多検体を鑑別することが可能となった。 (2)次世代シーケンサーによるDNAマーカーの探索 実験材料にはこれまでに系統維持してきた総アルカロイドの組成に特徴のある株(エフェドリンの比率が50%,100%,プソイドエフェドリンの比率が99%)やエフェドリン系アルカロイドを含有しない株などを用いてGRAS-Di解析を行った。その結果,4019個のマーカーの候補が明らかになった。さらに主成分分析によって含有成分と関連があるDNAマーカーの候補を見出した。
|