研究課題/領域番号 |
18K14940
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
中村 賢一 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (70512002)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | C-配糖体 / 腸内細菌 / 代謝酵素 / Gfo/Idh/MocA / 酸化還元酵素 |
研究実績の概要 |
生薬成分の中には、糖の炭素とアグリコンの炭素が直接C-C結合した種々のC-配糖体が存在する。腸内細菌による生薬成分の代謝は、漢方薬の薬効発現に関与していると考えられている。本研究の目的は、腸内細菌が産生するC-配糖体代謝酵素の触媒機構を解明することである。 これまでの研究により、C-配糖体からアグリコンへの代謝は、中間体(糖部分3位酸化体)を経由する数段階の酵素反応であることが明らかになっている。本年度は、生薬カッコンに含まれるイソフラボンC-配糖体puerarinの代謝に関与する酵素DgpAについて、詳細な機能の解析を行った。DgpAはGfo/Idh/MocAファミリーの酸化還元酵素であり、3-oxo-glucose存在下、puerarinを3"-oxo-puerarinに酸化した。また、DgpAはglucose 存在下、3"-oxo-puerarinをpuerarinに還元することから、可逆反応を触媒する酵素であることが分かった。精製DgpAを冷メタノールで変性させ、得られた溶液をHPLCで分析した。その結果、NAD(H)が検出されたことから、DgpAはNAD(H)結合型の酵素であることが分かった。また、DgpAの酵素速度論解析を行い、DgpAが触媒する酸化還元反応がping-pong機構で進行していることを明らかにした。 次に、遺伝子組換え大腸菌を用いて3種類の酵素(DgpA、DgpB-C、DgpG)を別途調製した。これら3種類の酵素存在下、puerarinを基質として酵素反応を行うと、daidzeinとglucoseが生成した。このことから、puerarin代謝に関与する腸内細菌酵素を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、本年度は3"-oxo-puerarin代謝酵素、3'-oxo-mangiferin代謝酵素について、それぞれX線結晶構造解析を行い、酵素の触媒機構を解析する予定であった。しかし、各酵素の大量精製法は確立しているものの、タンパク質の結晶化がうまくいかず、結晶構造解析には至っていない。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度と同様に、3"-oxo-puerarin代謝酵素、3'-oxo-mangiferin代謝酵素の結晶化条件のスクリーニングを行う。また、イソフラボンC-配糖体puerarin、キサントンC-配糖体mangiferinの代謝に関わる腸内細菌由来の酵素群について、酵素速度論解析などの詳細な機能解析を行う。さらに、C-配糖体代謝酵素が可逆的な反応を触媒する知見を得たことから、腸内細菌酵素を用いた各種C-配糖体の酵素合成も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、酵素の結晶化実験が想定通りに進まなかったため、研究計画を一部変更し、酵素の速度論解析などを中心に実験を行った。そのため、使用する試薬類に変更が生じ、次年度使用となった。来年度もX線結晶構造解析に向けた結晶化実験を継続する予定であり、次年度使用分は各種消耗品費として使用する計画である。
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