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2018 年度 実施状況報告書

腸内細菌叢の変化を介した緩下薬の下剤活性制御に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K14942
研究機関福山大学

研究代表者

高山 健人  福山大学, 薬学部, 講師 (60568559)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード緩下薬 / 腸内細菌 / 大黄甘草湯 / センノシドA / 食餌
研究実績の概要

大黄甘草湯は大黄と甘草の2つの生薬からなる漢方薬で、臨床的にその効果は広く認められている緩下薬である。しかし、緩下薬など医薬品は効果を示す人(レスポンダー)と効果を示さない人(ノンレスポンダー)の存在がよく知られており、なぜこのような個人差(証)が生じるのか様々な研究が進められている。申請者は、緩下薬による下剤効果の個人差は食生活、特に食事による腸内細菌叢の違いが影響を及ぼすと考え、大黄甘草湯などの下剤効果と腸内細菌叢の変化についてマウスを用いて検討を行った。その結果、便秘症患者と腸内細菌叢が類似している高炭水化物飼料および高脂肪飼料摂取下の腸内細菌叢において、大黄甘草湯の下剤効果は有意に促進され、その効果に大黄に含まれるrhein 8-O-β-D-glucopyranoside(RG)が関与することを明らかにした。また、RGは腸内細菌叢を大きく変化させることで下剤効果を発揮することを解明した。一方で、高食物繊維飼料摂取下の腸内細菌叢において、大黄甘草湯の下剤効果は反対に有意に抑制された。一般的に食物繊維の摂取により腸内環境は整えられ便通は改善することから、そのような状態にある患者には大黄甘草湯が適応しない、すなわち大黄甘草湯の証ではないと考えられる。
本研究によって、食事による腸内細菌叢の違いが漢方薬のレスポンダーとノンレスポンダーの個人差を生み出す一因になっていることが明らかとなり、腸内細菌叢は東洋医学の重んじる漢方薬の適応(証)に深く関わっていることが強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高炭水化物飼料摂取下においてSA単独の下剤活性は有意に抑制された一方で、大黄甘草湯の下剤活性は有意に促進し、この大黄甘草湯の下剤活性促進作用にRGが関与することが明らかとなった。
高脂肪飼料摂取下においては、SA単独の下剤活性は変化を認めなかったものの、大黄甘草湯の下剤活性は高炭水化物飼料摂取下と同様に有意な下剤活性の促進を認め、この作用にもRGの関与が認められた。
高繊維飼料摂取下においては、SA単独の下剤活性は高く維持され続けた一方で、大黄甘草湯の下剤活性は有意に抑制された。この抑制作用にはRGなどは関与しておらず、他の大黄甘草湯成分の関与が推察された。一般的に食物繊維の摂取により、腸内環境は整えられ便通は改善することから、そのような状態下で大黄甘草湯の下剤活性が抑制される現象は東洋医学的に考えて大変興味深い結果である。
腸内細菌叢の変化について、高炭水化物および高脂肪飼料摂取下の腸内細菌叢は、Zhuらが報告している便秘症患者の腸内細菌叢と類似していると考えられた。緩下薬投与後の腸内細菌叢の変化を解析したところ、いずれの緩下薬の投与においてもFirmicutes / Bacteroidetes比は減少した。硬い便で多いとされるRuminococcaceaeはSA単独投与ではほとんど変化しなかったが、大黄甘草湯投与により大きく減少した。また、高炭水化物飼料摂取下においてEnterobacteriaceaeは、下剤活性が抑制されたSA単独投与ではほとんど変化を認めなかったが、大黄甘草湯投与により100倍近く増加した。
以上の結果から、SAや大黄甘草湯の下剤効果は食餌による腸内細菌叢の変化に左右され、特に大黄甘草湯は便秘症の腸内細菌叢に類似した状態下において下剤効果を発揮することが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

高繊維飼料摂取下において大黄甘草湯の下剤効果は有意に抑制されたことから、この抑制作用に関わる構成生薬および生薬成分の探索を試みている。この抑制作用に起因する生薬を同定するために、大黄甘草湯の構成生薬である大黄および甘草の影響を検討したところ、大黄投与群の下剤活性は投与翌日から有意に抑制され、大黄甘草湯と同様の結果を示した。そこで、大黄熱水抽出物についてMCI gel CHP-20Pを用いて、水、20%、40%、60%MeOHおよびMeOH画分に分画し、SAを添加して下剤活性を評価しており、下剤活性の抑制に関わる成分の探索を試みている現状である。
また、高繊維飼料摂取下における大黄甘草湯の投与前後の腸内細菌叢の構成変化について解析したところ、大黄甘草湯の投与によりVerrucomicrobiaceaeの減少が認められ、下剤活性抑制との関連性が示唆された。そのため、大黄および大黄水抽出画分の投与による下剤活性抑制作用と腸内細菌叢の構成および機能変化との関連性について詳細な解析を進めていく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Daiokanzoto (Da-Huang-Gan-Cao-Tang) is an effective laxative in gut microbiota associated with constipation2019

    • 著者名/発表者名
      Takayama Kento、Takahara Chiho、Tabuchi Norihiko、Okamura Nobuyuki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-019-40278-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 生体のバランスに寄与する漢方薬と腸内細菌叢のクロストーク2018

    • 著者名/発表者名
      髙山 健人
    • 学会等名
      第35回和漢医薬学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 大黄甘草湯のrhein 8-O-β-D-glucopyranosideは腸内細菌叢の変化を介して下剤活性を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      髙山 健人、篠原 沙緒里、髙原 千穂、宗廣 春香、山中 清平、田淵 紀彦、岡村 信幸
    • 学会等名
      日本生薬学会第65回年会
  • [学会発表] 食物繊維摂取下における大黄甘草湯の下剤活性抑制に関わる成分の探索2018

    • 著者名/発表者名
      髙山 健人、川村 彩佳、福島 悠介、髙原 千穂、田淵 紀彦、岡村 信幸
    • 学会等名
      第53回日本薬学会中国四国支部学術大会
  • [備考] 福山大学薬学部 漢方薬物解析学研究室ホームページ

    • URL

      http://web.fukuyama-u.ac.jp/pharm/htmls/Labo/labs/KAMPO/index.html

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公開日: 2019-12-27  

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