研究課題/領域番号 |
18K14948
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
内田 淳 山梨大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (40816865)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ダカルバジン / 光分解 / 活性酸素種 / ラジカルスカベンジャー |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に引き続き抗悪性腫瘍薬であり光分解産物による血管痛が報告されているダカルバジン (DTIC) に対し,光化学的特性に基づいた DTIC による血管痛回避手法の構築を試みた. 昨年度に得られた知見をもとに,DTIC の光安定性に影響する様々な因子について網羅的に分析することによる,DTIC の光分解産物であり血管痛惹起物質である Diazo-IC の 産生の原因究明を行った.具体的には,DTIC の光分解には活性酸素種が関与している知見に基づき,DTIC に様々な光分解を阻害する物質を添加し,DTIC の光安定性および Diazo-IC の光産生への影響について精査した.その結果,ラジカルスカベンジャーの添加が DTIC の光安定性を改善し,Diazo-IC の産生を抑制した.特に,システイン (Cys) の添加は DTIC の光安定性改善ならびに Diazo-IC の産生抑制に効果を示し,DTIC の光安定化に最適な手法であることを示唆した. さらに,Cys を添加することによる DTIC の薬物動態への影響を検証するため,Cys 添加/非添加した DTIC をラットに静脈投与後の DTIC の血中濃度をモニタリングした結果,Cys を添加した DTIC 群は,Cys 非添加の DTIC 群と同様な血中濃度推移を示し,Cys 添加は DTIC の薬物動態への影響を認めなかった.以上の知見から,ラジカルスカベンジャーの添加は DTIC の光分解機構に基づいた光安定性を改善するアプローチとして有用であることを見出し,DTIC の光分解による血管痛発現リスクの軽減に繋がる結果を示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における昨年度達成できなかった研究計画および本年度の研究計画,すなわち,「ダカルバジン (DTIC) の光安定性に影響を及ぼす因子の分析および DTIC の光分解産物であり,血管痛惹起物質である Diazo-IC の産生機構の科学的解明」,「ダカルバジン (DTIC) の光化学的特性に基づいた DTIC の新規製剤設計開発」,「新規 DTIC 製剤の光化学的特性および薬物動態/薬力学的評価・検証」において,DTIC の光分解機構として活性酸素種が関与していること,また,そのメカニズムに基づいてラジカルスカベンジャーを添加した結果,DTIC の光安定化をもたらし,DTIC の薬物動態に影響しない新規製剤設計として見出すことができた.さらには,この研究成果を国際学会での学術発表および国際誌への論文投稿も行うことができた.しかしながら,光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化として,類似構造を有する医薬品の光安定性についての精査については十分に実施することができなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度十分に実施することができなかった光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化,すなわち,類似構造を有する医薬品の光安定性について網羅的に精査し,光安定性に影響を及ぼす化学構造の解明ならびに,新規製剤設計の光感受性医薬品への応用・最適化をを試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請当初本年度計画していた光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化において本年度に十分に実施することができたかったため,その研究計画に使用する予定であった物品費をはじめとした額を本年度に使用せず,次年度使用額として生じた.本年度使用せず次年度に繰り越した助成金は,本年度計画していた光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化の研究計画を次年度に続行するために使用する予定である.
|