【背景】小児における肺動脈性高血圧症(PAH)に保険適応を有している薬剤はシルデナフィル(Sil)とボセンタンのみだが、実臨床ではタダラフィル(Tad)、アンブリセンタン(Amb)やマシテンタン(Mac)も使用されている。しかし、小児の保険適応を有さないTad、Bos、Amb、Macの薬物動態は必ずしも明らかにはなっていない。そこで、母集団薬物動態解析(PPK)を行うための基礎データ収集の目的で、現在投与されている状況把握を行うための観察を行った。 【方法】PAHのため聖隷浜松病院小児循環器科を定期受診し、文書同意を得たPAH治療薬を内服している患児16人(男9人、女7人、平均年齢3.5歳、平均体重13.7kg)を対象とし、随時血漿中の上記薬物の血中薬物濃度の測定を行った。 【報告書作成時点での結果と考察】Sil、TadおよびAmbのインタビューフォームにおける平均値-標準偏差(あるいは95%信頼区間)より低値を示した測定点は、それぞれ、43.8%(7/16)、33.3%(5/15)、93.3%(14/15)であった。小児心不全薬物治療ガイドラインなどの用法用量で投与しても、十分な血中濃度に到達していない症例が存在することが示唆された。PPKを行うには十分な測定点ではないものの、小児患者に肺高血圧症の治療薬が投与されている状況の一端を把握することができた。今後、さらに測定点を積み増ししていくことでPPKのための基礎データになり得ると考えられる。
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