研究課題/領域番号 |
18K14953
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (50753555)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | トランスポーター / ピリドキシン / チアミン / リソソーム |
研究実績の概要 |
ビタミンは生体内において主に補酵素として機能しており、細胞の正常な機能維持のために重要な役割を担っている。ビタミン欠乏により様々な代謝系の機能不全が惹起されるが、ビタミンは生体内で合成されないため、生体内への供給は食物からの摂取に依存している。それゆえ、簡単にビタミン欠乏に陥らぬよう、生体にはビタミンを細胞内にプールする機構が備わっていると考えられている。そのプール機構の実体は、リソソーム内への蓄積による可能性があり、さらにリソソーム膜でのビタミンの輸送過程が制御機構として重要な役割を担っている可能性が考えられる。申請者は、その輸送過程を担う分子実体として、チアミンを輸送するトランスポーターの同定に成功した。 2018年度の研究活動により、上記の新規トランスポーターは、チアミンの他にビタミンB6の一つであるピリドキシンの輸送活性を有することを見出した。このことから、本トランスポーターをlysosomal multivitamin transporter 1(LMT1)と命名した。ビタミンB6は、ピリドキシンの他にピリドキサールとピリドキサミンがあるが、それらの親和性は低く、ピリドキシン特異的な認識機構を有していることが分かった。さらに、その輸送駆動力を調べた結果、プロトンとの共輸送を駆動力としていることが分かった。このことから、生体内においてはリソソーム内から細胞質内にピリドキシンを供給している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施予定であった、LMT1の基本的な機能解析(基質親和性、輸送駆動力、基質認識性の検討など)を完了することが出来た。また、ヒト組織と各種細胞株における発現量をreal-time PCRにより検討した。ヒト組織においては胎盤において発現が高いことが分かった。また細胞株においては、Caco-2やPC-3を始めとして比較的多くの細胞株において高発現していることが分かった。これにより、in vitroにおいてLMT1の生理的役割を解析するための基盤的な情報収集は完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
LMT1の発現が高い細胞株を用いて、チアミンやピリドキシンの細胞内プール機構におけるLMT1の寄与を解析する。また、LMT1の機能不全が腎癌の増殖に関与することが報告されていることから、ヒト腎癌由来でLMT1の発現が高いCaki-1細胞(2018年度の検討から見出した)を用いて、その寄与を検討する。さらに、リソソーム内へのチアミンやピリドキシンの輸送機構については未だ不明のため、この過程に関与する分子実体の探索も合わせて進める。
|