生体におけるビタミンのプール機構がlysosomeに存在するとの観点から、申請者らが同定した新規トランスポーターlysosomal thiamine transporter 1(LTT1)の詳細な機能解析を行った。まず基質認識性について検討したところ、ビタミンB6として知られるpyridoxineについてもLTT1により輸送されることを見出した。このことから、LTT1をlysosomal multivitamin transporter 1(LMVT1)を改称した。LMVT1のpyridoxine輸送能はthiamineより大きかったため、まずLMVT1によるpyridoxine輸送の詳細な検討を行った。 LMVT1によるpyridoxine輸送の親和性(Km)は0.511 mMであり、その基質認識については、pyridoxine類縁物質に対する特異性が高く、認識要件はかなり厳格であることが示唆された。輸送駆動力は顕著なpH依存性(酸性域における輸送活性上昇)を示した。また、H+濃度勾配の消失により、その輸送活性は失われた。これらの結果より、LMVT1はH+共輸送機構により機能することが示唆された。この機能特性から、LMVT1は酸性環境にあるリソソーム内から中性域pH環境にある細胞質へのpyridoxineを始めとした種々のビタミンの排出輸送に働いている可能性が考えられる。pyridoxineの細胞内蓄積機構として、リソソーム内への貯留が生じている可能性はあり、そのpyridoxineの細胞質への供給経路としての役割をLMVT1が有している可能性が考えられた。
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