研究課題/領域番号 |
18K14956
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
地引 綾 (中島綾) 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (00746224)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グルココルチコイド / ステロイド / グルココルチコイド誘発性糖尿病 / 膠原病 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
平成30年度実施予定としていた膠原病患者におけるグルココルチコイド誘発性糖尿病に対する処方実態調査および治療薬の有用性の検討を行うために、慶應義塾大学医学部倫理委員会および薬学部人を対象とする研究倫理委員会の承認を得た後、2012 年 1 月 1 日~2018 年 3 月 2 日までに慶應義塾大学病院リウマチ・膠原病内科にてグルココルチコイド投与後にグルココルチコイド誘発性糖尿病と診断され糖尿病薬(注射・内服)が処方された膠原病患者を対象として、診療録をレトロスペクティブに調査した。 調査対象患者は31名であった。そのうち約8割の患者は糖尿病の既往合併がある患者および診断はされていないが高血糖状態の患者であった。また、約3割の患者は高血糖誘発が報告されている薬剤(免疫抑制剤など)を併用していた。高用量(プレドニゾロン30mg/日以上)グルココルチコイド内服投与患者あるいは短期高用量グルココルチコイド静脈内投与(ステロイドパルス)患者16名・22件のグルココルチコイド投与開始5日後の血糖推移を調査したところ、夕食前および就寝前血糖値は、朝食前と比較して有意に上昇していた。 入院患者の第 1 選択薬剤としては速効型インスリンの前向き用量調節(スライディングスケール法)や食前投与が多く、その後DPP-4 阻害薬や食後過血糖改善薬等の経口糖尿病薬に変更され、さらに変更が必要な患者に対してはビグアナイド薬やチアゾリジン薬が処方されていることが明らかとなった。インスリンの使用後にグルココルチコイド誘発性糖尿病の特徴である食後の血糖上昇の抑制を目的とした薬剤が選択され、それでも血糖コントロール不良な症例に対しインスリン抵抗性改善薬が処方されたと考えられた。内服薬の第一選択としてDPP-4 阻害薬や食後過血糖改善薬が有用である可能性があるが、今後詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度中に、膠原病患者における11β-HSD1活性測定を行うための準備として、健常人検体を用いたCortisol、Cortisoneおよびその代謝に関わるステロイドの血中・尿中濃度測定による11β-HSD1の活性測定の条件検討を完了する予定であったが、現時点でまだ完了していないため。
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今後の研究の推進方策 |
グルココルチコイド誘発性糖尿病等、グルココルチコイドの投与による代謝異常に脂肪細胞のグルココルチコイド受容体が寄与しているという論文が最近報告された。それによると、少数での検討ながら、クッシング症候群患者は健常人と比較してグルココルチコイド受容体活性の指標となるFKBP5 mRNA発現量が有意に多いという結果が示されており、グルココルチコイド誘発性糖尿病の発現予測因子として、患者のFKBP5 mRNA発現量が利用できる可能性がある。 本研究でも、11β-HSD1活性測定と合わせてFKBP5 mRNAについても検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施する予定であった、Cortisol、Cortisone及びその代謝産物の血中、尿中濃度測定条件検討ができなかったため、試薬等の購入費が支出されなかった。 平成31年度の助成金と合わせ、試薬等の購入を行い、条件検討から開始していきたいと考えている。
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