研究課題/領域番号 |
18K14957
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今岡 鮎子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (10710957)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キレート形成 / 薬物相互作用 / テトラサイクリン系抗菌薬 / ニューキノロン系抗菌薬 / 金属カチオン |
研究実績の概要 |
本研究では、キレート形成に起因する薬物相互作用に関する新たなメカニズムの解明と、相互作用時の金属吸収亢進のリスクを検討することを目的に、ニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬と、アルミニウムやマグネシウムなどの金属カチオンを用いて、両者の細胞単層膜透過性を評価する。用いる細胞の種類としては、消化管吸収モデル細胞、血液脳関門モデル細胞、P糖タンパク質過剰発現細胞、OATP過剰発現細胞を予定している。 本年度はまず、ヒト大腸がん由来培養上皮細胞(Caco-2細胞)を用いて、テトラサイクリンとアルミニウムの透過性とそこでの相互作用を定量的に解析した。その結果、テトラサイクリンのみかけの透過係数(Papp)はアルミニウム濃度依存的に最大86%低下し、過去のヒト臨床試験報告と良好に対応していた。一方で、アルミニウムのPappは、ニューキノロン系抗菌薬の一種であるシプロフロキサシンの場合とは異なり、テトラサイクリンを併用しても亢進しなかった。以上より、同じメカニズム(キレート形成)により相互作用を起こす抗菌薬でも、アルミニウムの挙動に対する影響はその種類により異なる可能性が示された。しかし、まだ1種類のみの検討であるため、抗菌薬の種類を増やし、包括的に検討していく。 また、キレート体の細胞単層膜透過性の評価として、P糖タンパク質過剰発現細胞(LLC-PK1-COL300)細胞を用いた細胞単層膜透過実験にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に沿って、消化管吸収モデル細胞を用いて、テトラサイクリンとアルミニウムの膜透過実験を行い、両者の透過性を定量的に解析した。その結果、アルミニウム併用によるテトラサイクリン透過の低下の程度は、過去のヒト臨床試験報告と良好に対応していた。一方で、アルミニウム透過性は、テトラサイクリンを併用しても亢進せず、ニューキノロン系抗菌薬併用下とは異なる挙動を示す可能性があることが示唆された。 以上のように、テトラサイクリンとアルミニウムの透過性および相互作用について、細胞を用いたin vitro検討により、定量的に評価することができ、本内容は学会発表も行うことができた。そのため、おおむね当初の計画書に沿って進捗しており、順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、消化管吸収モデル細胞を用いた細胞単層膜透過実験において、抗菌薬の種類を変えて、抗菌薬および金属カチオンの透過特性を評価していく。 また、アルミニウムに関しては、計画書に従い、血液脳関門モデル細胞を用いた脳内移行性の評価を行っていく。
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