本研究では経皮投与によるアレルギー性皮膚疾患治療およびワクチン製剤の開発に向けて、経皮送達性に優れるリポソーム特性の探索と創製を目的としている。昨年度までの研究により、リポソームの表面電荷、Cholesterol含有率、ポリエチレングリコール(PEG)修飾が効率的な皮内送達性に影響を与えることを明らかにしている。令和3年度では、脂質組成の影響ならびに皮内送達性に優れる新規リポソームの創製を目的として、DOPE/DOPS脂質の含有、PEG脂質の分子量・修飾率が皮内送達性に与える影響について詳細に検討した。
初めに、DOPC脂質をベースとして、膜融合性脂質DOPEおよび免疫細胞指向性脂質DOPSを任意の割合で配合したリポソームを各々調製した。蛍光標識した各リポソームをマウス皮膚に塗布し、一定時間後の皮膚組織を共焦点レーザー顕微鏡により観察することでin vivo経皮送達性を評価したところ、DOPEおよびDOPS含有リポソームでは各々未含有リポソームと比較して、皮内広範囲への高い送達性を確認した。次に、PEGの分子量と修飾率による影響を明らかとするため、分子量の異なるDSPE-PEGを修飾率5~20 mol%でそれぞれ作製し、その皮内送達性を評価したところ、特に分子量550かつ修飾率5 mol%のリポソームが顕著な皮内送達性を示すことを確認した。最後に、これまでに得られた知見を基に、効率的な皮内送達性を確認している表面電荷・Cholesterol/DOPE/DOPS・PEG含有率を兼ね備えたリポソームを新規作製したところ、免疫細胞への取り込み効率および皮内送達性が顕著に向上することが明らかとなった。
以上より、皮内送達性に優れるリポソーム特性および脂質組成を網羅的に探索し、更にそれらの条件を兼ね備えたリポソームが相乗的に皮内送達性を向上させることを実証した。
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