研究課題/領域番号 |
18K14962
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
佐々木 将太郎 東邦大学, 薬学部, 講師 (50780300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスポーター / pH依存性 / 基質認識機構 / 起電性輸送担体 / 有機アニオン / モノカルボン酸 |
研究実績の概要 |
細胞に発現している輸送担体は、本来、イオンの恒常性の維持や栄養素の供給、生体にとって重要な生理活性物質の時間的・空間的維持のために機能している。近年、生体に存在している数多くの輸送担体が薬物を輸送することが明らかにされつつあり、中でも、様々な医薬品の吸収に関与するpH依存性輸送担体の存在が示唆されている。しかしながら、その輸送を担う分子実体の多くは未だ特定されていない。そこで本研究課題では、輸送実体が明らかになっていない医薬品を認識し、生体膜の透過を担う新規pH依存性輸送担体を機能レベルおよび分子レベルで同定することを目的としている。 本研究中間年度にあたる2019年度は、H+/オリゴペプチド共輸送担体およびpH依存性有機アニオン輸送担体について、以下の結果を得ることができた。 前年度までの検討によって、主に消化管に発現しているオリゴペプチド輸送担体は、ペプチド構造を有していない化合物をも認識し得ることが示された。そこで、経口投与により用いられる薬物とオリゴペプチド輸送担体との相互作用について検討を行った。その結果、カルボン酸型薬物(NSAIDs、スタチン系薬物など)はオリゴペプチド輸送担体を介した輸送に対し濃度依存的な阻害効果を示すことが明らかとなった。また、特定のカルボン酸化合物との相互作用によって、トランスポーターからチャネル様へと機能調節を受けることが明らかとなった。 pH依存性有機アニオン輸送担体については、既知有機アニオン輸送担体の中にもpH依存性を示す輸送担体(OATP、OAT)が存在することが知られているため、これらの輸送担体の基質(カルボキシフルオレセイン等)を用いて、pH依存性や基質特異性について検討を行った。その結果、新規pH依存性有機アニオン輸送担体はこれまでのOATPやOATとは明らかに異なる基質認識機構を有していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中間年度として、前年度に引き続き、pH依存性薬物輸送担体の基質認識性に関する検討を行った。H+/オリゴペプチド共輸送担体については、カルボン酸構造を有する医薬品との相互作用に関する知見が得られた。また、特定の条件下において、トランスポーターからチャネル様へと機能調節を受けることが明らかとなり、おおむね順調に進展している。一方、研究2年度目後半から3年度目にかけては、新規pH依存性有機アニオン輸送担体の同定を目指し、検討を進めていく予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、計画に遅れが生じている。以上を総合的に評価し、本年度の進歩状況をやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
大学封鎖や研究活動制限の段階的な解除にあわせて、実験を再開し、引き続き、新規pH依存性薬物輸送担体の機能解明および同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により学会・出張が中止となり、結果として、わずかに残が生じた。次年度使用額は主に輸送担体の同定に向けて必要な消耗品(細胞培養器具、各種溶媒等)に使用するため、残額分もこの用途に充てる。
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