研究課題/領域番号 |
18K14968
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
綿本 有希子 武庫川女子大学, 薬学部, 助手 (10757454)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | β細胞 / 分化転換 / 低分子化合物 |
研究実績の概要 |
膵島では、現在までに7種類の細胞の存在が確認されている。主要なものは、α細胞、β細胞、δ細胞、PP 細胞などである。これらの細胞には可塑性があり、GLP-1受動態作動薬をはじめとする薬剤や病態、化合物等の外挿刺激により、増殖、あるいは相互に分化/転換することはほぼ確実視されている。今回、ストレプトゾシン投与により発症させた糖尿病モデルマウスに、血糖改善作用のあることが報告されている薬剤を投与することで、実際の血糖改善効果と膵島での遺伝子発現変化を網羅的に解析することを目的として検討を行った。現在までのところ、薬剤投与後4週間から6週間で血糖改善効果が発揮されることを確認した。また糖尿病処置と同時並行して薬剤を投与することで糖尿病の重症度(血糖値上昇)の観点から、より軽症になっている可能性が示唆された。これら一連の変化は、組織学的には膵島の再出現によって達成されていることが示唆された。糖尿病のコントロールマウスと比較して、膵組織の単位面積あたりの膵島の出現率とその面積は、治療群で増加していた。一方、正常コントロール群と比較した場合には、有意差を伴って相当な相違が認められた。しかし血糖改善効果からすると、病態改善には十分量のインスリン産生細胞の再出現か、もしくはインスリンの分泌量があることも確認された。インスリン分泌細胞の由来については、現在、遺伝子の発現変化について網羅的に解析しているところである。特に、β細胞の分化/転換、増殖に抑制的に働いているとされるUncoupling protein-2や、増殖に関係しているInsulin/insulin-like growth factor-1からのシグナル伝達に注目して解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年9月4日に試料や試薬などが保管されている建物が36時間程度停電した。これにより、試料・試薬が失われてしまったことにより、研究が一時停滞した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた組織、試料により、組織中の遺伝子発現、タンパク質発現、表面抗原の変化をスクリーニングする。既報に基づき、α細胞やβ細胞の分化や細胞運命の転換に関わる遺伝子について注目して解析を予定している。これら一群の遺伝子の発現変化の解析により、低分子化合物が影響をおよぼしている標的分子、あるいは分化転換に影響しているシグナル伝達に関わる分子を見つけ出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年9月に発生した停電により、試料、試薬類が失われてしまった。このことで、実験の再開が遅れた。その結果、研究の進捗にも影響したため残額が発生した。また、新年度では異動により請求事務が出来な無くなる恐れがあったため、解析依頼の発注を止めざるを得なかった。以上が次年度使用額が生じた主な理由である。異動先で費用の請求が可能となった時点で、課題遂行とその進捗を図りたい。
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