研究課題/領域番号 |
18K14970
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
渡瀬 大輔 福岡大学, 薬学部, 助教 (00580200)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / プロドラッグ |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症機序として、肝に中性脂肪(TG)沈着が起こり(First hit)、さらに肝障害を招く要因が加わる(Second hit)”Two hit theory”が広く支持されている。NASH治療法は未だ確立されていないが、近年トコトリエノール(T3)の有用性が報告されており、中でもγ-T3が注目されている。我々はこれまでに、本研究室で開発したγ-T3の水溶性エステル型プロドラッグである2R-γ-Tocotrienyl N,N-dimethylglycinate hydrochloride (γ-T3DMG)がin vitro及びin vivo脂肪肝モデルのTG量を有意に抑制すること、即ちFirst hitへの有効性を明らかにした(H28-29若手研究B渡瀬)。本年度の研究では、in vivo NASHモデルを用いてγ-T3DMGのSecond hitへの有効性を検討した。 1. In vivo NASHモデルの確立:TSODマウスに高脂肪食を8週間与えると肝臓が白く肥大し、血漿、肝臓中のTG及びTCHO量が有意に増加した(First hit)。更に炎症誘導剤TNF-α投与により肝臓中IL-1β、IL-6及びTGF-β1のmRNA量が有意に増加した(Second hit)。→本研究にてTSODマウスを用いたin vivo NASHモデルを確立した。 2. In vivo NASHモデルにおけるγ-T3DMGの効果:γ-T3DMG+TNF-α添加群及びTNF-α単独添加群において、いずれのmRNA量もデータの偏差が大きく、γ-T3DMGのSecond hitへの有効性を判断できなかった。本研究における高脂肪食+炎症誘導剤を用いたSecond hitの誘発は、症状の進展が強すぎた可能性も考えられるため、実験条件をさらに検討し再評価する必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで報告されている論文を参考に、TSODマウスを用いた新たなin vivo NASHモデルを確立し、γ-T3DMGによるNASH進展に対する効果評価を試みたが、データの偏差が大きく、γ-T3DMGのSecond hitへの有効性を判断できなかった。本研究におけるTSODマウス+高脂肪食+炎症促進剤TNF-α によるSecond hitの誘発は、症状の進展が強すぎた可能性がある。実験条件をさらに検討し再評価する必要性が考えられたため、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今現在、実験条件を再考し、in vivo NASHモデルおけるγ-T3DMGの効果評価を再度行っている。また、前年度から行っているin vitro NASHモデルを用いたγ-T3DMGの効果評価において、新たにヒト肝臓癌細胞株を用いたモデル作製し、並行して実験している。また、γ-T3DMGによるNASH進展抑制メカニズムの評価に関してはin vitro NASHモデルを中心に実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vivo NASHモデルが確立できた一方で、γ-T3DMGのSecond hitへの有効性を判断できなかったため、NASH進展抑制メカニズムの詳細な評価が行えず、その研究費が次年度使用額となった。今現在in vivo NASHモデル及び新たなin vitro NASHモデルおけるγ-T3DMGの有効性の評価を実行しており、次年度中に全て使用する予定である。
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