研究課題/領域番号 |
18K14979
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
塚本 仁 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (60600880)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 固形腫瘍 / 血流感染症 / 起炎菌 / 転帰 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍患者において、感染症は化学療法の継続や患者予後に大きな影響を与える合併症の一つであり、迅速かつ適切なマネジメントが重要となる。適切な抗菌薬治療を考える上で起炎菌等に関する疫学的データは貴重である。新規薬理作用を有する抗がん剤の上市により、がん化学療法は著しい進歩を遂げている一方で、悪性腫瘍患者に生じる感染症の起炎菌等に関する経年的な変化を調査した報告は少ない。悪性腫瘍患者の感染症を対象とした研究の多くは発熱性好中球減少症患者や造血器腫瘍患者など特定の患者群を対象としたものがほとんどであり、悪性腫瘍の大半を占める固形腫瘍を対象とした調査はほとんどない。本研究は、 疫学的データが乏しい固形腫瘍患者をターゲットとし、血流感染症(BSI)の起炎菌の細菌学的特徴の経年的変化、転機、予後に関連する臨床的因子を明らかにすることを目的とする。2011年から2019年の間に福井大学医学部附属病院において、血液培養が陽性となった患者のうち固形腫瘍をもつ成人患者を対象とし、各症例の分離菌、薬剤感受性、基礎疾患、転帰などを医療情報システムより抽出し、分離菌の傾向、経年的変化、菌種間の死亡率の違いについて検討した。対象患者は799例、好中球減少患者は47例(5.9%)のみであった。分離菌はグラム陰性菌49%、グラム陽性菌40%、真菌7%、嫌気性菌4%で、52例(6.5%)がpolymicrobialであった。この傾向に経年的変化は見られなかった。BSI後、30日以内の死亡率は全体では14.5%で、特にカンジダ属(39%)、緑膿菌(20%)、E. faecium(19%)の死亡率が高かった。好中球減少患者では、緑膿菌、Streptococcus sp.の分離率が高い一方で、カンジダ属によるBSIは1例もなかった。また、感染源が同定できない症例が有意に多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集積したデータを使用し、学会発表を行った。その他、英語論文1報が投稿中であり、現在、さらにもう1報の論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、学会が開催されなかったため(発表としては成立しているとのこと)、血液腫瘍との比較など再解析することを計画している。その成果については、次年度中に国内学会で発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本薬学会第140年会において成果発表を行うための経費(旅費、参加費)を計上していたが、新型コロナウイルスの影響で開催が中止となった。年会中止の取り扱いとして「プログラム集の発行、Web要旨の公開をもって成立し、本年会での発表は成立したものとする」とのことだが、補助事業の目的をより精緻に達成するためには詳細なデータ公開が必要と考える。次年度の学会にて成果発表を行うため補助事業期間の延長を希望した。
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