研究課題/領域番号 |
18K14987
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
安部 賀央里 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (70440625)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬物性肝障害 / JADER / インシリコ予測 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では有害事象報告データベースを活用し、人工知能技術の1つである機械学習を用いて医薬品の化学構造情報の観点から薬物性肝障害を予測することを目的とした。 平成30年度は、医薬品医療機器総合機構が公開している医薬品副作用データベース(JADER)から肝障害を発症する医薬品を抽出し、対応する医薬品の化学構造情報を取り込んだ独自のデータベースの作成に取り組んだ。具体的にはJADERに格納されている症例一覧テーブル、医薬品情報テーブル、副作用テーブルを関連付けたデータテーブルの作成を行い、ICH国際医薬用語集(MedDRA)の標準検索式(SMQ)を使用して肝毒性を定義した。シグナル検出や報告数を用いて肝毒性を引き起こす可能性が高い医薬品と、肝毒性を引き起こす可能性が低い医薬品を抽出した。次に、これらの医薬品について化学構造情報を分子記述子として付与した独自のデータベースを作成し、予測モデル構築のためのデータセットを準備した。さらに、機械学習(ランダムフォレスト、サポートベクターマシーン)を用いて医薬品の化学構造情報を特徴量とし、薬物性肝障害の有無を判別するインシリコ予測モデルの構築も行った。 薬物性肝障害は新薬開発段階での発見が難しいことから、医薬品の化学構造情報からインシリコでの予測を行う本手法の開発は、候補化合物のスクリーニングを効率化することが期待される。また、本手法は対象とする副作用に対して柔軟性があり、医薬品の化学構造情報が入手できれば大規模な有害事象報告データベースを適切に活用することで、様々な副作用の予測に応用することが可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画では、医薬品副作用データベースを用いて薬物性肝障害に関する医薬品の情報抽出を実施し、該当する医薬品の化学構造情報を付与した独自のデータベースを作成することにより、予測モデル構築に向けたデータセットを準備することを予定しており、これらの計画は予定通り実施できた。加えて、薬物性肝障害の有無を判別する予測モデルの試験的な構築も達成したため、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に構築した薬物性肝障害に関するインシリコ予測モデルについて、さらなる予測性能の向上を目指しJADERから作成した薬物性肝障害に関する医薬品データセットの中身について詳細な検討を行い、学習データを改善する。また、機械学習のアルゴリズムや適切な記述子の条件検討によるアプローチも行う。 独自に作成したデータベースに基づいて、予定している候補医薬品の化学構造情報と肝毒性の関連性解析を進める。すなわち、肝毒性に特徴的な化学構造の探索に加えて、患者背景情報、併用薬の情報を解析し、予測モデルにフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予測モデル構築の準備段階としてデータベース作成に関する種々の検討を行った。機械学習にて必要となる高度な計算を行うハードウエア環境の準備は除外したため、次年度使用額が生じた。 次年度は、機械学習を用いた予測モデルの構築、化学構造情報と肝毒性の関連性解析を予定しているため、化学構造や機械学習に関連した計算環境の構築として使用する予定である。
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