研究実績の概要 |
本研究では消化管からの薬物の新規吸収制御機構として、細胞内Guanosine triphosphate (GTP)量の変化によるTight junction (TJ)の制御の可能性に着目し研究を展開している。これまでに本研究の基礎となる知見を基に、GTP生成のde novo経路において律速酵素であるInosine-5’-monophosphate dehydrogenase (IMPDH)の阻害剤であるMycophenolic acid (MPA)によるTJ開口作用の確認を、ヒト結腸癌由来上皮細胞のCaco-2細胞を用いて行った。しかしながら先行論文の結果に反して、TJ開口の指標となる経上皮膜間抵抗値(TEER)は、MPAの作用時間 (24, 48, 72, 96 hr)および濃度 (1, 10, 100 μM)依存的な低下は認められず、逆に上昇が認められた。MPA添加によりTEERが上昇していることから、TJが制御因子である細胞間隙経路を介する薬物の透過性には変化が認められなかった。MPA添加による細胞内GTP量をHPLCにより測定したところ、1および10 μM MPA添加96時間後のみの限定的な条件での結果だが、MPAの濃度依存的な減少を確認している。MPAによるTEER上昇機構の解明のために、TJ構成因子の1つであるClaudin family (Claudin-1, Claudin-2, Claudin-4)の発現変動をWestern blottingにより解析しているが、有意な変化は認められていない。Claudinの発現変動に関してもMPA添加96時間のみの検討となっているので、さらなる条件での検討が必要である。 上述の本研究で得られているMPAによるTEER上昇は、先行論文の結果に対して真逆の結果となっていることから、本実験結果の整合性を確認するために、MPAと同様のIMPDH阻害作用を有するMizoribine (MZB)を用いて検討を行ったところ、MPAの結果と同様にTEERの低下は認められず、上昇を確認している。
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