研究課題/領域番号 |
18K14989
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
瀧沢 裕輔 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (40453807)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Guanosine triphosphate / Tight junction / Mycophenolic acid / IMPDH inhibitor / Paracellular pathway / Sodium caprate |
研究実績の概要 |
本研究では消化管からの薬物の新規吸収制御機構として、細胞内Guanosine triphosphate (GTP)量の変化によるTight junction (TJ)の制御の可能性に着目し研究を展開している。これまでに本研究の基礎となる知見を基に、GTP生成のde novo経路において律速酵素であるInosine-5’-monophosphate dehydrogenase(IMPDH)の阻害剤であるMycophenolic acid (MPA)によるTJへの影響を、ヒト結腸癌由来上皮細胞のCaco-2細胞を用いて行っている。 TJ開口の指標となる経上皮膜間抵抗値(TEER)は、MPAの濃度および暴露時間依存的な上昇が認められ、その一方で細胞内ATP量はMPAの暴露による変動は認められていないが、細胞内GTP量はMPAの濃度(Guo; 1, 10 μM)および暴露時間依存的(2, 4 h)な減少を確認している。一方で、Salvage経路によるGTP生成の基質物質となるグアノシン(Guo; 10, 100 μM)暴露条件では、TEERおよび細胞内GTP量に変化は認められなかった。しかしながら、MPA (10 μM)とGuo (100 μM)のコンビネーション条件では、細胞内GTP量の低下は認められなかったが、TEERの上昇が認められたため、細胞内GTPとTEERの関係は未解明である。 MPAがTEERの形成を促進するのであれば、消化管疾患をはじめとする消化管粘膜障害を伴う疾患に対して、MPAの暴露による消化管バリアー機能の回復促進(低下抑制)の可能性が考えられる。そこで、TJ開口作用を有する吸収促進剤であるカプリン酸ナトリウム(C10)を用いて、MPAの暴露によるTJ開口抑制効果の有無の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPA暴露による細胞内GTPおよびATPの発現量の推移を検討した。また、salvage経路によるGTP生成の基質物質となるグアノシン暴露条件および、MPAとGuoのコンビネーション条件での細胞内GTPおよびATP量の測定を行った。 これまでの検討においてMPAによるTEER亢進効果が認められたため、MPAによるTJ開口抑制効果の可能性に着目し、吸収促進剤であるカプリン酸ナトリウム(C10)によりTJを開口条件に対するMPAの影響を検討した。C10のTJ開口作用を確認するために、C10添加条件におけるParacellular markerの透過亢進および、TEERの減少の確認を行った。さらに、C10によるTJ開口作用は、Myosin Light Chain 2 (MLC2)のリン酸化の亢進が関与していることから、C10暴露によるMLC2およびリン酸化MLC2 (pMLC2)量をWestern blottingにより測定し、pMLC2の増加の確認を行った。 Caco-2細胞を用いてParacellular markerである5-CFおよびFD-70の膜透過実験を行い、MPAを長時間暴露条件では、C10の効果が変化することを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内GTP量のTJの制御への関与は未だ未解明であるため、細胞内GTP量とTEERの相関性を評価する。細胞内GTP量の変動とTEERの変動とにはタイムラグが生じる可能性も考えられることから、Claudin familyやOccludinなどのTJの構成因子の発現変動等も併せて検討を行う予定である。 C10の効果に対するMPAの効果をより詳細に検討行うと同時に、同様にTJの開口が認められる低酸素モデルや、LPS誘発炎症モデル、活性酸素による脂質過酸化モデル棟を構築し、MPAによる障害抑制効果(障害保護効果)の検討を行う予定である。 上皮細胞には、上皮細胞特異的な物理学的バリアーが存在する。TJもこの物理学的バリアーのひとつであるが、MPAにより消化管粘膜バリアー機能亢進効果であるTJ形成促進効果(TEER上昇効果)が認められているため、他のバリアー機能への影響の検討も並行して行う。具体的には、上皮細胞膜およびその近傍に存在し、異物の上皮細胞への到達を抑制しているムチン層(非攪拌水層)への影響も検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の複数の試薬の購入を予定していたが、残量が十分であったため、購入を次年度に変更したため。
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