研究課題/領域番号 |
18K14991
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
杉山 恵理花 昭和大学, 薬学部, 准教授 (50302732)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 13C-リドカイン / 13C-呼気試験 / 薬物代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)の活性変動を臨床において定量的かつ簡便に評価する新たな方法として13C-リドカイン呼気試験法を検討している。 平成30年度は、小動物(マウス)を用いて、薬物代謝活性が変動した各種条件下における13C-リドカイン呼気試験を実施するとともに、今後の生理学的動態(PBPK)モデル解析に必要となる13C-リドカイン血中濃度推移の検討を行った。また、従来のCYP3A in vivo プローブとして知られるミダゾラムを用いた評価法と本呼気試験法との比較を行うため、ミダゾラムおよびその代謝物の血中濃度定量法の確立と体内動態検討を行った。 具体的には、既知のCYP阻害薬(ケトコナゾール(CYP3A)、シプロフロキサシン(CYP1A)、フルボキサミン(CYP3A,1A))および誘導薬(リファンピシン(CYP3A))を併用下、13C-リドカイン経口投与による呼気試験を実施して呼気中13CO2変動を測定し、13C-リドカイン経口投与呼気試験において、CYP3A活性阻害が最も大きく呼気反応に影響することを確認した。さらに、微量血液を用いた13C-リドカイン血中濃度LC-MS/MS定量法を確立するとともに13C-リドカイン体内動態試験(静注、経口投与時、ケトコナゾールあるいはシプロキサシン併用下)を実施し、呼気反応変動がCYP3A活性変動を反映していることを示すために今後検討するPBPKモデル解析に必要となるデータを得ることが出来た。 さらに、ミダゾラムのクリアランスおよび代謝物/未変化体AUC比を用いた従来のCYP3A評価系(従来法)との比較検討を行うため、LC-MS/MSを用いたミダゾラムおよび代謝物(1-OD-ミダゾラム、4-OH-ミダゾラム)の血中濃度定量法を確立し、体内動態試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、平成30年度では、薬物代謝酵素活性変動時における13C-リドカイン呼気試験とリドカイン体内動態試験を中心に、本呼気試験評価系の呼気反応を記述する新たなPBPKモデルの構築を開始するとともに、従来のin vivo評価系との比較検討のため行うミダゾラム体内動態試験の前段階として微量血液を用いた血中ミダゾラム濃度測定法(LC-MS/MS)の確立を行う、としていた。 概ね計画していた項目について検討を実施することが出来たが、一部、結果に基づき、投与量を変更して再検討するなど行った(特に、13C-リドカイン静注時体内動態試験、CYP誘導剤併用下13C-呼気試験)。また、ミダゾラム代謝物のひとつである4-OH-ミダゾラムのLC-MS/MSにおけるイオン感度が低く、抽出方法や移動相の全面的な再検討を繰り返した。あわせて、ミダゾラム体内動態試験においても、4-OH-ミダゾラムの血中濃度推移の定量性が低かったことから、今後は、ミダゾラムの主代謝物である1-OH-ミダゾラムのみに焦点を当てて検討を進めていくこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、前年度に引き続き、小動物(マウス)を用いて、13C-リドカイン呼気試験によるCYP3A活性評価についてデータを蓄積するとともに、PBPKモデルを用いた本薬物代謝能評価系の解析を行う。また、従来法(ミダゾラム体内動態試験)と本呼気試験との相関性を検討し、本評価系の妥当性について考察する。 具体的には、CYP3A代謝活性阻害の程度を変化させた条件下における13C-リドカイン呼気試験を実施し、CYP3A代謝活性評価の定量性について検討する。また、13C-リドカイン経口投与による呼気試験と初回通過効果の関連性を確認するため、13C-リドカイン静注時における呼気試験を検討する。PBPKモデル解析では、小腸代謝を含む初回通過モデルを組み込んだPBPKモデルを構築し、前年度に得られた体内動態および呼気試験データを用いて解析を実施する。 ミダゾラムを用いた従来法との比較においては、引き続き、ミダゾラム体内動態試験を実施して体内動態パラメータ(クリアランスおよび代謝物/未変化体AUC比)を算出し、本呼気試験法との相関性について検討する。 これらの研究成果を、補助事業期間中および終了後に国内の薬学関連学会にて発表を行い、研究論文として学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度において実験に用いた試薬・物品を予算内で購入したため、合計金額が予算よりも僅かに低くなり、残額(1084円)が発生した。本未使用分は、平成31年度に引き続き、試薬や物品の購入に使用予定である。
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