研究実績の概要 |
薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP)の活性変動は臨床上問題となるが、個別化医療に繋がる迅速簡便な定量的評価法の確立には至っていないのが現状である。我々は、新たなin vivoプローブとして13C-リドカインに着目し、その13C-呼気試験法について検討を行った。 平成30年度は、小動物(マウス)を用いて、薬物代謝活性が変動した各種条件下における13C-リドカイン呼気試験を実施するとともに、生理学的動態(PBPK)モデル解析に必要となる13C-リドカイン血中濃度推移の検討を行った。その結果、13C-リドカイン経口投与呼気試験において、CYP3A活性阻害が最も大きく呼気反応に影響することを確認した。 令和元年度は、13C-リドカイン静注時における呼気試験およびその動態試験の検討により、13C-リドカイン経口投与呼気試験における呼気反応は、初回通過効果における代謝活性を反映することが示唆された。このことは、PBPKモデルを用いた薬物代謝活性変動時におけるモデル解析においても示された。さらに、従来CYP3A代謝活性評価に用いられているミダゾラム動態試験(従来法)との比較検討を行うため、LC-MS/MSによるミダゾラムおよび代謝物(1-OD-ミダゾラム)の血中濃度定量法を検討・確立し、ミダゾラム動態パラメータ(CLtot/F, 代謝物/未変化体AUC比)と13C-リドカイン呼気反応パラメータとの相関性を検討した。その結果、両者の間には正の相関性が認められた。 以上より、本研究における検討を通し、13C-リドカイン呼気試験法を用いてCYP3Aの代謝変動を迅速簡便に定量的に評価できる可能性が示された。
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