研究課題/領域番号 |
18K14992
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
山岸 喜彰 武蔵野大学, 薬学部, 助教 (30805255)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | チアミントランスポーター / チアミン / メトロニダゾール誘発性脳症 (MIE) / メトロニダゾール |
研究実績の概要 |
本研究では、メトロニダゾール(Metronidazole: MTZ) 誘発性脳症 (Metronidazole-Induced Encephalopathy: MIE) の発症原因として「チアミン欠乏仮説」を提唱し、MIE発症メカニズムの解明を目的に以下の検討を行った。 まず、MTZのチアミントランスポーターとの分子間相互作用を解析するために、統合計算化学システムであるMOE (Molecular operating environment) を用いた。チアミンを基質とするヒトの主要なトランスポーターの構造は解かれていないため、モデルとして細菌のチアミントランスポーター (4NMY) の活性部位におけるMTZとのドッキングシミュレーションにより、MTZはチアミンと同様に4NMYに結合する可能性が示された。 また、MTZによるチアミンの細胞内への取り込み阻害活性を検討するためにヒト結腸癌由来細胞であるCaco-2細胞を小腸上皮細胞様の単層膜を形成するまで培養し、既知のチアミントランスポーター阻害剤であるピリチアミンをポジティブコントロールとして、複数濃度のMTZ (80、400、2,000 μM) 添加時のCaco-2細胞におけるチアミン-d3の取り込み実験を行い、細胞内へのチアミン-d3の取り込み量を測定した。その結果、いずれのMTZ濃度においても薬物非添加群と比較して低い値を示した。ピリチアミン添加群においても薬物非添加群と比較して低い値を示した。臨床においてMTZ常用量の経口投与時の消化管における最大MTZ濃度 (1回量: 500 mg/250 mL) は約11.6 mMと推定され、また、反復静脈内投与時の最大血中MTZ濃度は約260 μMとの報告があることから、MTZは消化管及びBBBにおいてチアミンの取り込みを阻害し、MTZ誘発性脳症の発症に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題なく研究を進めることができており、当該研究における成果を国内外の学会にて発表することができたことから、おおむね順調に研究が進められていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト血液脳関門のin vitroモデル細胞として汎用される、ヒト脳毛細血管内皮細胞株であるhCMEC/D3細胞を用いた評価系、及び代表的なヒトチアミントランスポーターであるhTHTR-2を発現させたイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株MDCKII細胞を用いた評価系を用いてMTZによるチアミン-d3の取り込み阻害活性を評価する。 また、各細胞株を用いたMTZによるチアミン-d3の細胞内への取り込み阻害活性評価のみならず、各細胞をTranswellに播種することで薬物透過性評価系を確立して、MTZによるチアミン-d3の上皮細胞層透過阻害活性についても評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の試薬が予定した額より安く購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度も同様に消耗品の購入に充てる予定である。
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