研究課題
ABKの小児用量は、抗菌薬TDMガイドラインの推奨投与量および添付文書上のABK 1日1回 4~6 mg/kgであるが、新生児および乳幼児期の薬物動態は、成熟度の影響を受けるため、年齢や腎機能等を考慮した個別の投与設計は提唱されていない。本研究では、日本人小児に対するABKの適正用量を提案することを目的とした。令和3年度は研究期間の最終年度であり、前年度に再構築した既報ABK小児PPKモデルを用いて、TDMガイドラインおよび添付文書の小児用量を評価するとともに、ABKの適正用量を検討した。複数の既報ABK小児PPKモデルについて、prediction-corrected visual predictive check法および経験的ベイズ推定法により算出した予測値と観測値を比較し、モデルの適用性と予測精度を評価した。臨床上有用と考えられたモデルを用い、共変量(年齢、身長、血清クレアチニン値)を層別化した仮想被検者において、モンテカルロ・シミュレーション法により、ABK血漿中濃度をシミュレーションし、目標血漿中濃度域内への到達率を算出した。その結果、新生児~11歳の各年齢別の標準血清クレアチニン値において、ABK 1日1回 4 mg/kgまたは6 mg/kgを投与した場合の、TDMガイドラインの目標ピーク値15 mg/L以上の到達率はいずれの投与量でも20%以下、添付文書の目標ピーク値9 mg/L以上の到達率は、それぞれ、33~64%、79~94%であった。一方、TDMガイドラインおよび添付文書の目標トラフ値2 mg/L未満の到達率は、いずれの投与量でも96%以上であった。本研究より、腎機能が正常な新生児~11歳の小児において、安全性を考慮した投与量は、ABK 1日1回 6 mg/kg、有効性を重視した投与量は、ABK 1日1回 6 mg/kg以上であることが明らかになった。
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