研究課題/領域番号 |
18K14995
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
角山 香織 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (10571391)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有害事象 / 医薬品副作用データベース / JADER / 発現時期 |
研究実績の概要 |
本研究では、副作用の早期発見・重篤化回避を目指し、副作用モニタリングの基盤となる信頼性の高い情報を創出することを目的としている。医療機関のIT化やお薬手帳の電子化などにより、副作用モニタリングを確実に実施するためのシステムは整いつつある。システムに搭載するための医薬品ごとの最適な副作用モニタリングのタイミング、検査値や自覚症状等の確認項目については、添付文書やインタビューフォーム、リスク管理計画等を基に設定することが多い。しかし、その根拠は治験で得られた結果であり、実臨床とは異なる点があることは否めず、副作用モニタリングに必要な情報そのものがない場合も多い。 2019年度は、引き続き、日本の医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、適切なタイミングで副作用モニタリングを実践するために必要となる、各医薬品に発現する副作用の種類やその好発時期を明らかにすることを目指した。臨床で繁用される降圧薬、糖尿病治療薬、睡眠薬、また、重篤な皮膚障害が問題となる抗てんかん薬などを中心に解析を進めた。 一方、JADERには、副作用の発現時期を推測するための投与開始日や有害事象の発現日に欠損があり、他の観点から創出する情報の信頼性を高める必要性があった。そこで、保険薬局の薬歴データに着目し、調剤歴と服薬指導記録の患者の訴え等を組み合わせて、医薬品の副作用の発現時期の確からしさを高めることを目指し、抗精神病薬、降圧薬の解析に着手した。 本研究の最終的な目的は、得られた結果を副作用モニタリング支援システムとして臨床現場で活用できる形にすることであるが、このような支援システムをより有用なものとするには、導入した際に実際にどのような情報が必要になるか等を明らかにする必要がある。そこで、保険薬局と共同で支援システムの有用性と課題を明らかにするための取組みを開始し、論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
JADERの解析だけでは、注目する医薬品の副作用の発現時期を十分に得られない場合があり、それを補完する方法の検討に時間を要した。また、2018年度に検討を開始した人工知能(AI)を利用した臨床検査値の変動傾向の調査に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
JADERを利用した解析では、対象医薬品を広げ、それらの有害事象の発現時期を明らかにするとともに、それらの有害事象の早期発見につながる臨床検査値の変動傾向を明らかにしていく予定である。保険薬局との取り組みでは、薬歴データから副作用の発現を疑わせる患者の訴えについて明らかにしていく。これらにより、適切な時期に適切な臨床検査値や初期症状等の確認が可能となる情報提供につながるものと考える。 また、計画に従い、これまでの成果を論文投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実臨床の医療情報を解析する際にかかる関連費用を計上していたが、解析を開始するまでに想定以上に時間を要しており、2019年度に解析を開始できなかった。2020年度は引き続き医療情報から有害事象の早期発見につながる臨床検査値の変動傾向を明らかにすることを目指すため、これに費用をあてる予定である。また、保険薬局との取組みにおいて、薬歴データの提供にかかる関連費用が必要となっているが、こちらの解析は概ね計画通り進行し、学会発表、論文投稿なども進んでいるため、こちらの解析進展に費用をあてる予定である。
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