副作用モニタリングを確実に実施するためのシステムを構築するには、医薬品ごとの最適な副作用モニタリングのタイミング、検査値や自覚症状等の情報が必要である。本研究では、副作用の早期発見・重篤化回避を目指し、副作用モニタリングの基盤となる信頼性の高い情報を創出することを目的とした。 2018年度、2019年度は、副作用モニタリングを実践するにあたり、適切なタイミングで情報を提供できるように、各医薬品の副作用の好発時期を明らかにすることを目指し、臨床で繁用される降圧薬、抗精神病薬、生物学的製剤ならびに重篤な皮膚障害が問題となる抗てんかん薬などを中心に、日本の医薬品副作用データベース(JADER)を用いて解析を進めた。その結果、抗精神病薬における成人と小児の有害事象の種類や発現時期等の特徴を明らかにした。また、関節リウマチに使用される生物学的製剤について、有害事象の種類や発現時期等の特徴を明らかにするとともに、製薬企業から提供される添付文書等各種情報との比較により臨床で不足している情報を明らかにできた。 一方、JADERには、副作用の発現時期を推測するための投与開始日や有害事象の発現日に欠損があり、他の観点から創出する情報の信頼性を高める必要性があった。そこで、保険薬局の薬歴データに着目し、調剤歴と服薬指導記録の患者の訴え等を組み合わせて、医薬品の副作用の発現時期の確からしさを高めることを目指し、2019年度は、薬歴データのクリーニングに着手し、2020年度からは患者数の多い高血圧、精神疾患に焦点をあて本格的に解析を開始した。2021年度には、抗精神病薬による咳嗽の発現時期について解析を進めた。最終年度(2022年度)は、抗精神病薬に加え、降圧剤による咳嗽の発現時期ならびに抗精神病薬によるざ瘡の発現時期を明らかにすることができた。
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