急速な高齢化と高額な新医薬品の発売により医薬品費の増加が問題となっているが、欧米では後発医薬品(GE)使用推進で医薬品費抑制に一定の効果を得た。しかし、日本ではGE のある先発医薬品が全て切り替わっても医薬品費減少への貢献を疑問視する報告も見られる。本研究では、スイッチ現象に影響を与える要因(①同効新薬の発売、②同成分合剤の発売、③GE の発売、④患者臨床情報など)を検証する。検証には、全国規模の販売データを用いたマクロな時系列データを、また患者の診療情報が含まれる国立病院機構142 病院の大規模データベース(DB)を用いたミクロなコホートデータを用いる。 2018年度には、これまで行ってきた降圧剤のデータを用いて、①同行新薬の発売、③GE発売によるスイッチの影響を検証した論文が、欧州の雑誌、「Health policy and Technology」に掲載された。 2019年度には、精神神経系薬剤(SSRIs/SNRIs)データの分析に取り組んだ。SSRIs/SNRIsは、先発医薬品が販売されて以降、抗うつ薬ガイドラインの改訂、自殺企図による安全性情報の発出、後発医薬品が発売と同時に後発医薬品に関する薬事政策が強化されるなど、多くの社会的要因によってその使用実態が変化してきた。しかし、これらの関連を記述する研究はされてこなかった。本薬効群についても、ARIMA(the autoregressive integrated moving average)モデルを構築し、使用実態に対する外的要因の影響を検証した。
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