肝の常在性マクロファージであるKupffer細胞(KC)は肝の免疫反応の中心的役割を担うだけでなく、肝の恒常性維持や肝疾患の病態メカニズムとも密接に関わる。本研究ではKCに高発現を示す脂肪酸結合蛋白質FABP7による細胞内代謝バランスと、肝線維化過程に関わるマクロファージの抗炎症性機能活性化制御機構について検討した。 単離KCは十分な細胞数が得られない為、骨髄細胞をM-CSF存在下で分化させたマクロファージ(BMDM)を用いた。野生型(WT)マウスおよびFABP7遺伝子欠損(KO)マウスの骨髄からBMDMを誘導し、インターロイキン(IL-)4刺激により抗炎症性機能に活性化誘導したところ、KO-BMDMでは活性化マーカー分子の発現がWT-BMDMに比べて低下しており、FABP7のマクロファージ抗炎症性機能制御への関与が示された。また、IL-4刺激後マクロファージはミトコンドリアの脂肪酸酸化機能が亢進するが、KO-BMDMはWT-BMDMと比較して脂肪酸酸化機能が低下していた。一方で、解糖系の増加傾向を示した。すなわち、FABP7は代謝バランスの調節に関与することが示唆された。続いて、、脂質代謝関連遺伝子の発現を制御する転写因子であるIRF4、PPAR、LXRの発現を検討したところ、WT-BMDMに比べてKO-BMDMで有意に低下していた。これらの転写因子の発現低下により脂肪酸化機能が低下した可能性が示唆される。 以上の結果から、FABP7は脂質代謝関連遺伝子の発現を制御する転写因子IRF4やPPARγ、LXRαの転写に関与することで、脂質代謝バランスを調節し、マクロファージの抗炎症性機能を制御する可能性が示唆された。今後、FABP7による脂質代謝関連遺伝子の発現制御機構について検討する。
|