研究課題
哺乳類の放射状グリア(radial glia; RG)細胞と呼ばれる神経幹細胞は、脳表面まで非常に長い放射状の突起を伸ばしており、基底膜側突起を受け継いだ娘細胞は、未分化を維持した神経幹細胞となる。当研究室より、このRG細胞では細胞周期因子Cyclin D2のmRNAが輸送されることを見いだした(Tsunekawa et al., 2012)。細胞内でmRNA輸送が行われる際、RNA結合タンパク質(RBP)が標的mRNAに結合する。RBPの一つである脆弱性X症候群の原因因子FMRPが基底膜側突起へのmRNA輸送を担うことが報告されている(Pilaz et al., 2016)。そこで、胎生期の終脳におけるFMRPの標的mRNAを網羅的に探索するために、RNA immunoprecipitation sequencing (RIP-Seq)を用いて多数のFMRPの標的mRNAを同定した(Casingal, Kikkawa et al., 2019)。この結果を参照したところ、CyclinD2はFMRPの標的mRNAには含まれていなかった。また、FMRPをコードするFmr1遺伝子のノックアウトマウスのRG細胞基底膜側突起における CyclinD2の局在には変化が認められなかった。現在、特異的なmRNA配列に結合し得るRBPを探索できるデータベースを用いて探索した候補RBPの解析に着手している。また、RBPが標的mRNAを特定の場所まで運搬する際に、モータータンパク質を利用して細胞骨格上を移動することから、胎生期のRG細胞においても神経細胞と同様の機構があると予想した。本研究において、in situ hybridizationによりモータータンパク質のキネシン分子がRG細胞の存在する脳室帯領域に発現することを見いだしており、現在これらの分子のノックダウン実験を進めている。
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Developmental Dynamics
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https://doi.org/10.1002/dvdy.156.
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https://doi.org/10.1101/550095
https://doi.org/10.1101/769026