研究実績の概要 |
申請者はこれまで視床下部弓状核グリアに発現するFABP7が、視床下部ニューロンのレプチン感受性に関与すること(Yasumoto et al., Mol Neurobiol, 2018)、FABPのサブタイプのひとつであるFABP5が、タニサイトという放射状グリア様の一種に発現していることを発見した。そこで今年度はFABPのサブタイプのひとつであるFABP5が、タニサイトという放射状グリア様の一種に発現している知見をもとに、視床下部タニサイト以外の、栄養感知に関する分子、特にFABPファミリーやミトコンドリアの主要タンパク質の局在を免疫染色により検討した。その結果、FABPファミリーの中でもアラキドン酸に高い結合能を有するFABP3が視床下部の血管や神経細胞に発現しており、 FABP3KOマウスの分離微小血管やニューロンでは、アラキドン酸の取り込みが低下していることが明らかになった。加えて、ミトコンドリア呼吸鎖複合体を構成するNdufs4が視床下部弓状核に高い発現を示し、Ndufs4KOマウスの視床下部弓状核では、ニューロンやグリア細胞の形態には大きな変化が見られないものの、細胞内ROSの産生やGnRHをはじめとする視床下部ホルモン分泌に変化が生じていることが分かった。加えて以上の結果は、視床下部を構成する各種細胞では、血液中の脂肪酸への細胞応答やミトコンドリア機能変化が、内分泌系や自律神経系の活動と密接に関連していることを示唆している。
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