研究課題/領域番号 |
18K15010
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安藝 翔 金沢大学, 医学系, 助教 (80767210)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PI3K / ホスホイノシタイド / メンブレントラフィッキング |
研究実績の概要 |
膜動現象の作動には形質膜や細胞内小胞器官膜の適所におけるグリセロリン脂質ホスホイノシタイド (PPI)の産生と分解が必要である。3’リン酸化PPI合成の律速酵素PI3KにはI-III型の3クラスが存在し、最も研究の進んでいるI型PI3KはPI(3,4,5)P3を産生して細胞遊走や細胞増殖に関与し、III型PI3K-Vps34はPI(3)Pを産生してオートファジーを制御するなど、PI3-キナーゼ(PI3K)は生存に必須の脂質リン酸化酵素であり、癌、免疫、代謝の分野で活発に研究が展開されており、創薬研究の重要標的分子ともなっている。申請者らは、PI3KのクラスII α型酵素(PI3K-C2α) が、受容体エンドサイトーシスとその後の細胞内受容体シグナリングに必須であることを明らかにした。PI3K-C2αノックアウト(KO)マウスが血管新生障害により胎生致死であるのに対し、構造が近縁で酵素産物が同一の類縁酵素PI3K-C2β KOマウスは正常であることから、両酵素には独自機能・重複機能両者の存在が示唆される。PI3K-C2α、PI3K-C2βの心筋、平滑筋特異的二重KOマウスを作製したところ、心筋特異的二重KOマウスにおいて新生仔は約半数が心不全により生後1~2日以内に死亡し、平滑筋特異的二重KOマウス母親は分娩障害を呈した。本研究は、周産期における新生仔循環適応におけるII型PI3K、PI3K-C2α及びPI3K-C2βの独自機能・重複機能を解明し、周産期の母子生命維持および適応機構におけるPI3Kの生理的機能を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①PI3K-C2α、PI3K-C2βの新生仔心筋リモデリングにおける役割の解明 (i) 心エコー:高解像度小動物用エコーイメージングシステム(Vevo2100)を用いて心室径、心室自由壁、中隔壁厚心筋収縮能を計測した。 (ii) インビボオートファジー活性: PI3K-C2α、PI3K-C2βマウスをGFP-LC3トランスジェニックマウス(オートファジーレポーターマウス)と交配、作成し、心臓の部位特異的なオートファジーを評価中である。 (iii) 心筋細胞の微細形態:電子顕微鏡、免疫染色により生後直後のマウス心臓を評価し、二重KOマウスにおいてミトコンドリアの異常を見出した。 (iv) 心筋細胞のCa2+シグナリング:生細胞イメージング法により、Ca2+ 蛍光指示薬で[Ca2+]iを測定した。 ②平滑筋特異的二重KO母親マウスの分娩異常の解明 (i) 子宮の形態 : HE、アザン染色などの標準的な染色法、電子顕微鏡を用い、妊娠前及び妊娠後の子宮内膜、平滑筋層の構造と各層を構成する細胞の微細形態を解析した。 (ii) 子宮筋の収縮能と収縮シグナル : 摘出子宮筋の自発収縮、オキシトシン誘発収縮、収縮シグナル経路(Rho-Rhoキナーゼ-ミオシンホスファターゼ-ミオシン軽鎖リン酸化)を検討した。子宮平滑筋を培養し、FRETイメージング法により、単一平滑筋レベルでのRho活性化と細胞内Rho活性化部位を評価し、二重KOマウスにおいてRho活性化不全を見出した。 (iii) 子宮筋の遺伝子・タンパク発現 : 分娩時の子宮収縮に関与する生理活性因子受容体(オキシトシン、PGE2、PGF2α)およびL型電位依存性Ca2+イオンチャネルの妊娠に伴うタンパク発現と遺伝子発現変化を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
①PI3K-C2α、PI3K-C2βの新生仔心筋リモデリングにおける役割の解明 上記(iii)で述べた二重KOマウス心筋内におけるミトコンドリア異常の原因を明らかにし、二重KOマウスが生後直後に心不全をきたすメカニズムを解明する。現在、PI3K-C2α、PI3K-C2βマウスをGFP-LC3トランスジェニックマウス(オートファジーレポーターマウス)と交配し、心臓の部位特異的なオートファジーを解析中である。また、二重KOマウス心筋内ミトコンドリアの機能を評価する為のアッセイを計画している。 ②平滑筋特異的二重KO母親マウスの分娩異常の解明 上記(ii)で述べた二重KOマウス子宮平滑筋におけるRho活性化不全のメカニズムを明らかにする。子宮平滑筋の小胞PIレベルを単離子宮平滑筋細胞を培養し、各種PI特異的なGFP標識プローブ発現ベクターを遺伝子導入して、生細胞イメージング法により小胞のPIレベル、小胞の運動、融合・分裂を評価し、PI3K-C2α及びPI3K-C2βの作用点を明らかにする。
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