研究課題
膜動現象の作動には形質膜や細胞内小胞器官膜の適所におけるグリセロリン脂質ホスホイノシタイド (PPI)の産生と分解が必要である。3’リン酸化PPI合成の律速酵素PI3KにはI-III型の3クラスが存在し、最も研究の進んでいるI型PI3KはPI(3,4,5)P3を産生して細胞遊走や細胞増殖に関与し、III型PI3K-Vps34はPI(3)Pを産生してオートファジーを制御するなど、PI3-キナーゼ(PI3K)は生存に必須の脂質リン酸化酵素であり、癌、免疫、代謝の分野で活発に研究が展開されており、創薬研究の重要標的分子ともなっている。申請者らは、PI3KのクラスII α型酵素(PI3K-C2α) が、受容体エンドサイトーシスとその後の細胞内受容体シグナリングに必須であることを明らかにした。PI3K-C2αノックアウト(KO)マウスが血管新生障害により胎生致死であるのに対し、構造が近縁で酵素産物が同一の類縁酵素PI3K-C2β KOマウスは正常であることから、両酵素には独自機能・重複機能両者の存在が示唆される。PI3K-C2α、PI3K-C2βの心筋、平滑筋特異的二重KOマウスを作製したところ、心筋特異的二重KOマウスにおいて新生仔は約半数が心不全により生後1~2日以内に死亡し、心臓組織においてミトコンドリアの異常増殖が観察された。また、平滑筋特異的二重KOマウス母親は子宮平滑筋収縮不全からなる分娩障害を呈した。以上から、II型PI3K、PI3K-C2α及びPI3K-C2βは周産期における新生仔循環適応において独自機能・重複機能を有する事が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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