研究実績の概要 |
本研究では、インスリン投与によりマウスの代謝改変を誘導後、骨格筋構成分子の量的・質的変化を経時的に定量し、骨格筋代謝制御に与える分子間相互作用の影響を解析する。平成30年度は、以下のとおり骨格筋構成分子の量的変化の計測を行った。 12-16時間絶食後、C57BL/6J野生型マウス (10週齢) にインスリンを腹腔内投与 (0.7 U/kg) し、経時的 (0-4時間の間の計13点) に両足の腓腹筋を採取した。各時点につき3個体実施し、コントロールとしてはPBSを投与した。採取した腓腹筋より代謝物・タンパク質・total RNAをそれぞれ抽出し、大規模計測に至適化した方法にてサンプル調製を実施した。ただし、計測スループットの問題から、代謝物は全13時点で行ったのに対し、タンパク質およびRNAは5時点分のみとした。これらのサンプルを用いて、代謝物・タンパク質については質量分析 (それぞれCE-MS・LC-MS/MS解析) を、RNAについてはディープシークエンスを行った結果、119代謝物、1,795タンパク質、18,387 mRNAが同定・定量された。各分子の時系列データについて、全時点数の半数以上の定量値が得られているもののみを抽出後、さらに大きなノイズを含むものを除外した結果、97代謝物、1,582タンパク質、16,039 mRNAの時系列データが得られ、これらがさらなる数理的解析に使用可能と判断された。これにより、体内エネルギーの状態変化に伴う骨格筋構成分子の量的変化の情報が大規模に得られた。
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