研究実績の概要 |
本研究では、マウス骨格筋構成分子をインスリン投与後経時的に定量し、骨格筋代謝制御に与える分子間相互作用の影響を解析する。令和元年度は、以下のとおり骨格筋構成分子の時間変化について解析した。 前年度に定量し、さらなる解析に使用可能と判断された約100代謝物、1,600タンパク質、16,000 RNAについて、種々のデータベースから分子機能や関連パスウェイ、骨格筋に発現している上流の制御因子等の情報を取得し、関連分子のマッチングや、事前知識と時間変化の関連性解析を可能にした。その上で、骨格筋における各分子の時間変化の特徴を捉えるために、同条件で取得・処理した肝臓データと突き合わせたところ、両臓器で直接比較可能な分子は、50代謝物、1,049タンパク質、9,404 RNAであった。さらに、インスリンにより時間変化が見られるインスリン応答分子を抽出して比較したところ、骨格筋と肝臓では異なる時間変化の傾向が確認された。特に、アミノ酸代謝経路においては、代謝物、タンパク質、RNAの全てで異なる時間変化を示す分子が存在し、分子階層を跨いだ臓器特異的制御の存在が示唆された。次に、代謝マップのネットワーク構造を基に、各代謝物濃度について代謝反応を触媒する酵素(および補間的にそのRNA)による微分方程式モデルの作成を試みたが、欠損値が予想よりも多かったことにより、既知の生化学反応機構をそのまま反映させるのは効率的ではなかった。そのため、各代謝物濃度に大きく影響を与え得る数ステップ以内の近傍の反応についても合わせて考慮することとした。また、類似の時間変化パターンを示す近傍の分子をまとめて扱うことの有効性についても検討を開始した。
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