研究課題/領域番号 |
18K15011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松崎 芙美子 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (10631773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 代謝 / 骨格筋 / インスリン / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
本研究では、マウス骨格筋構成分子をインスリン投与後経時的に定量し、骨格筋代謝制御に与える分子間相互作用の影響を解析する。令和2年度は、前年度までに骨格筋より取得し品質確認済みの大規模時系列データを用いて、骨格筋における分子間相互作用の多階層ネットワークを次のとおり作成した。まず、コントロールに対してインスリン刺激特異的に時間変化が見られた分子を、ある程度の欠損点を許容しつつ抽出し、得られた31代謝物、311タンパク質、6,155RNAを各分子階層のネットワークノードとした。そして、ノード間の時間変化の類似性やその特性等に加えて既知の制御関係や機能的関連性を考慮して、直接的に影響を及ぼし得る分子間に有向エッジを引いた。既知の制御因子については、今回定量できていなくともノードとして追加した。その結果、代謝物・タンパク質・RNA層を跨ぐ、計7,682ノード・4,552エッジから成る骨格筋特異的ネットワークが構築された。同等の方法で作成した肝臓特異的ネットワークと比較すると、タンパク質・代謝物ノードやその間のエッジ数がそれぞれ半数程度となっており、その属性についても異なる傾向が見られた。今後、作成された多階層ネットワークの構造や特性をさらに解析することで、骨格筋代謝のみならず、より幅広い生物学的プロセスについても、階層横断的な分子間相互作用による制御メカニズムとその重要性を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋構成分子を用いた数理モデル作成が難航しているものの、階層横断的ネットワーク作成が順調に進行した。
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今後の研究の推進方策 |
構築した骨格筋特異的な多階層ネットワークについて、その全体像解明と併せて、生物学的プロセス/経路毎のサブネットワークやネットワークダイナミクス等の観点から、その構造や特性の詳細を解析する。さらに、肝臓におけるネットワークとの比較を通して、臓器特異的かつ階層横断的なインスリン応答のメカニズム解明を目指す。代謝制御については、インスリンに応答して変動する全ての代謝物について、そこに連結するネットワークノードを抽出し、それらが代謝物プールの時間変化を説明し得るか検討する。可能であれば微分方程式モデルを作成し、定量的解析も行う。最終的には、これらの解析結果から総合的に、骨格筋代謝に重要な分子や分子間相互作用の絞り込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質リン酸化定量が保留中であることに伴い、一部の必要経費を次年度に持ち越した。定量が必要と判断されれば速やかに実施するが、そうでない場合には、持ち越した経費は解析結果の検証実験等に充てる。また、新型コロナウイルスの感染拡大を鑑みて今年度の学会参加等を中止した。状況を見ながら、可能であれば次年度に参加し成果発表を行う。
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