研究課題
横浜市立大学循環制御医学では抗ウイルス薬であるビダラビンが心臓型アデニル酸シクラーゼを抑制することで心不全の病態悪化抑制および抗不整脈作用を有することを明らかにしてきた。しかしながら、ビダラビンは難水溶性のため投与方法に制限が生じ、臨床応用の弊害となっていた。そこで、ビダラビンの構造を基に、水溶性を高めた誘導体であるV2Eを開発した。本申請では水溶性ビダラビン誘導体であるV2Eの抗不整脈作用を明らかにすることを目的とした。本申請では本研究室にて開発した長時間心房細動が誘発可能なマウスモデルに頸静脈カテーテルを設置することで薬物の経静脈内投与による心房細動の除細動効果を検討することが可能となるモデルを確立した。そのモデルを用い、水溶性ビダラビン誘導体 V2Eの経静脈内投与による心房細動の除細動効果を検討した。その結果、水溶性ビダラビン誘導体 V2Eは心房細動誘発後に経静脈内投与することで、心房細動持続時間を短縮した。このことから、水溶性ビダラビン誘導体V2Eは心房細動に対する除細動効果を有することが明らかとなった。次に、心室性不整脈に対する水溶性ビダラビン誘導体 V2Eの予防的効果を検討した。カルセクエストリン遺伝子欠損マウスの尾静脈より経静脈内投与を行ったのち、心室性不整脈を誘発を行った。その結果、水溶性ビダラビン誘導体は心室性不整脈の発生を減少させた。このことから、水溶性ビダラビン誘導体 V2Eの予防的投与は心室性不整脈に対する抗不整脈作用を示すことが明らかとなった。また、ビダラビンの経静脈内投与による心機能への影響を評価したところ、投与直後に一過性の心拍数の顕著な低下が認められた。以上のことから、水溶性ビダラビン誘導体は心房細動に対する除細動効果を示すとともに、その予防的投与は心室性不整脈に対して抗不整脈作用を示すことが明らかとなった。
すべて 2019
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circulation journal
巻: 83 ページ: 295-303
10.1253/circj.CJ-18-0743.