研究課題/領域番号 |
18K15021
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡田 守弘 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (90638991)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 代謝 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
これまでの多くの癌研究は、遺伝子変異に着目し進められ、発癌の原因となる数多くの遺伝子異常が報告されてきた。そして、癌自体を制御して、癌を体から排除し、癌を根治させる試みが今日も世界中で行われている。しかし、癌によって生き物が死に至る際、癌が全身の生理状態に与える悪影響の実態は依然として謎が多い。 本研究では、ショウジョウバエの遺伝学的手法を駆使し、癌が全身の生理状態に悪影響を与える際の作用機序、それを制御するシグナルの解明を試みた。2018年度は、本研究の主要な柱である、癌が全身の生理状態に悪影響を与える際の作用機序の解明、において明確な進展が得られた。この研究結果により、癌が全身の生理状態に与える悪影響の実態を解析する際の、強固な基盤が確立出来た。具体的には、以下の3点をこれまでに明らかにした。 1. 癌によって誘導される劣悪な生理状態に対して、死を逃れ、恒常性を維持出来る代謝の条件を探った。そして、通常の代謝の条件と比較して、遺伝子癌個体の生存率が顕著に上昇する代謝の条件を発見した。2. 癌が全身の生理状態に悪影響を与える際の作用機序の解明を試みた。具体的には、遺伝学的手法を用いて組織の代謝状態を変化させ、網羅的に癌個体の生存率に重要な臓器の同定を試みた。そして、癌によって誘導される劣悪な生理状態を仲介する特定の組織を同定することが出来た。3. 癌が全身の生理状態に与える悪影響に重要なシグナルの同定を試みた。次世代シークエンス法を用いた網羅的解析と遺伝学を用いた機能解析により、癌個体の生存に必須な遺伝子を複数同定することが出来た。 以上の結果より、癌が全身の生理状態に与える悪影響の理解につながる重要な成果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ショウジョウバエの癌個体が、癌によって誘導される生理的な変化に対して最終的には個体死に至る現象に着目し、この個体死の原因となるメカニズムの解析を通じて、癌が全身の生理状態に与える悪影響の理解を目指すものである。 これまでに、遺伝学を用いた網羅的な解析により、本研究の主要な柱である、癌が全身の生理状態に悪影響を与える際の作用機序の解明において、明確な進展が得られた。また、癌個体の生存に必須な遺伝子を複数同定することが出来たため、癌が全身の生理状態に与える悪影響に重要なシグナルを同定するための基盤となる成果を得ることが出来た。
以上の経過から、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で同定された、癌個体の生存に必須な遺伝子の詳細な解析を行う。具体的には、同定された遺伝子の変異体や過剰発現系統を作製する。そして、変異体や過剰発現系統を用いて、癌による全身の生理状態に与える悪影響がどのように変化するか個体レベルで解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、物品の購入費が少なく済んだため。また国際学会旅費が不要であった。翌年度にさらに必要となる次世代シークエンス解析費用(試薬を含む)として使用する予定である。
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