研究課題
WNT/βカテニンシグナルの活性化は心臓形成に必須であるが、心臓形成以降の役割はほとんど調べられていない。私たちは心筋細胞特異的にWNT/βカテニンシグナル活性化を可視化するゼブラフィッシュを樹立した。このレポーターゼブラフィッシュでは、心房と心室の間に形成される房室管領域に、生後2日目から成体に至るまで、持続的にWNT/βカテニンシグナルの活性化が検出された。私たちは、成体の心筋細胞がWNT/βカテニンシグナルを活性化する意義を明らかにすることを目的に研究を行った。初めに、房室管領域でWNT/βカテニンシグナル活性化を調節するメカニズムを探索した。その結果、心拍依存性に房室管領域に発現するWnt2bbとWnt9bに依存して活性化することが明らかになった。次に、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の役割を明らかにするために、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞特異的に細胞死を誘導した。その結果、冠血管形成が抑制された。ゼブラフィッシュの冠血管形成は、生後1ヶ月以降に開始し、成熟後も続く。生後1ヶ月以降に心筋細胞特異的にWNT/βカテニンシグナルを阻害しても冠血管形成は抑制されたことから、心筋細胞でのWNT/βカテニンシグナルが冠血管形成に必要であることがわかった。さらに、下流で機能する因子を探索するために、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の遺伝子発現をRNA-シーケンスで探索した。その結果、エンドセリン2の発現上昇が検出された。また、組織培養した心臓の冠血管は、エンドセリンシグナルに応答して伸長することが明らかになった。本研究を通して、心拍依存性のWNTが房室管領域の心筋細胞のWNT/βカテニンシグナルを活性化し、冠血管形成を調節することが明らかとなった。これまでに報告のない冠血管形成調節機構であり、発生研究や心臓再生研究へ貢献できると期待している。
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