本研究は、マウス脳組織切片の核染色画像とそれに付随する免疫染色像から、細胞の状態の違い・機能の違いなどを解読することを目標としている。オープンクロマチンは核の中でもゲノムがゆるんだ状態で遺伝情報が読み取られやすくなっている領域であり、細胞の状態や機能を反映していると考えられる。前年度までに、申請者は本研究における基盤技術の1つとして”オープンクロマチン領域”を可視化するタンパク質型プローブ ChrocodiLEの開発を進めてきた。ChrocodiLEは、既知のオープンクロマチンマーカーと光学顕微鏡観察下において共局在を示した。さらにChIP-seqによる解析から、塩基レベルのスケールにおいてオープンクロマチン領域への特異的な結合を示すことが明らかとなった。ChrocodiLEの特筆すべき特長として、固定組織のみならず生細胞においても観察ができる点が挙げられる。この性質を利用して静止画のみならず、同一細胞でのオープンクロマチンの動的変化を追跡することが可能となる。そこで、生きた動物の脳内におけるオープンクロマチン構造変化の解析を目指すべく、ChrocodiLEを発現するトランスジェニック動物を進めてきており、 すでにマウス、ハエ、線虫の作製に成功した。また、観察した細胞のオープンクロマチン領域のsingle cell解析を進めるためにChIL-seqによる解析を導入することにも着手し、予備的な結果であるがすでにChIP-seqと同様の結果が得られることを確認している。すなわち、これらの技術を組み合わせた新しいオープンクロマチン1細胞解析を行うための新基盤技術を本期間中に構築することができた。
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