研究課題
進行肝細胞癌は術後早期に再発をきたし、特に脈管浸潤を伴うものは予後不良である。肝細胞癌において、S1PR発現がEMTやcancer stemnessに関与し、S1PR制御が肝細胞癌の治療となりうるかを検討した。肝切除した肝細胞癌108例では、S1PR1、S1PR3高発現群でともに全生存率と無再発生存率の低下を認めた。S1PR1高発現群では門脈浸潤、肝静脈浸潤、肝内転移、AFP高値、PIVKAII高値が有意に多く、S1PR3の高発現群では門脈浸潤を有意に多く認めた。S1PR3発現に関わらず、S1PR1高発現において全生存率、無再発生存率の低下を認めた。全生存率における多変量解析では、S1PR1高発現、無再発生存率では、肝炎ウイルス感染、腫瘍径、S1PR1高発現、S1PR3高発現が独立した予後不良因子であった。Vimentin、MMP-9発現ではS1PR1発現と正の相関、E-cadherin発現とS1PR1発現は負の相関を認めた。Western blotでHLEではvimentinの発現を強く、HuH7ではE-cadherinの発現を強く認めた。SEW2871投与ではHuH7、HLEともにvimentin、N-cadherin、MMP-9、snailの発現の増強、E-cadherinの減弱を認め、W146投与では反対の結果を認めた。HuH7、HLEともにS1PR1活性にて細胞浸潤能の促進、spindle shaped細胞へと変化、アノイキス耐性の増強、S1PR1抑制にてspheroid cystへ変化を認めた。S1PR1はEMTを通して細胞浸潤を促進し、cancer stemnessの獲得により、肝内転移や血行性転移を起こし、肝切除後の予後不良に寄与する可能性が考えられた。脈管浸潤を有する肝細胞癌患者に対し、S1PR1の制御は肝細胞癌の新たな治療標的となりうることが示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Hepatology Communications
巻: 3 ページ: 954-970
10.1002/hep4.1361
Mol Clin Oncol
巻: 10 ページ: 419-424
10.3892/mco.2019.1807
Ann Surg Oncol
巻: 26 ページ: 907-917
10.1245/s10434-018-07132-7