研究課題/領域番号 |
18K15045
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
佐藤 克哉 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60733508)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CRISPR/Cas9 / AID / Aicda / 転写調節 |
研究実績の概要 |
近年、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集が比較的容易に行えるようになってきた。また様々な生物のCas9やCas9の変異体を活用する事により、これらをゲノム編集以外の様々な研究に活用しようとする試みも盛んに行われている。特に、遺伝子切断不活性化型のCas9をdCas9といい、転写活性化タンパク質や、蛍光タンパク質などと融合させることにより、遺伝子発現の調節や転写調節の仕組みを解明する為に活用することができる。 本研究では、Bリンパ球において抗体改変に必須のタンパク質であるAIDに着目し、その遺伝子発現の仕組みおよび、遺伝子活性化時に生じるAID遺伝子 (Aicda) の立体的な状態を上述したCRISPR/Cas9 systemを用いて明らかにしようとするものである。 これまで、Aicda及びその周辺の領域には、広範にわたり散在する転写調節領域が存在し、それらに結合する転写調節因子も複数存在することが明らかにされてきた。本年度は、dCas9-VP64などを活用し、これらの各DNA領域の転写活性への寄与を検討した。また、各種蛍光タンパク質融合型のdCas9、およびルシフェラーゼを発現するコンストラクト作製を行い、生物発光を利用したBリンパ球活性化時・非活性時のDNA構造の解明を試みた。その結果、本研究で用いた細胞においては、dCas9-VP64による転写の活性化は弱いものの、プロモーター上の適切な配列にdCas9-VP64タンパク質を結合させることにより、プロモーター下流の遺伝子の転写を活性化することを確認できた。次年度は、これらの解析によって得られた知見を基に、定常状態の細胞内において、Aicda遺伝子上の立体構造を再構築し、AID発現を操作できるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書に記載の通り、本年度は、各種発現コンストラクトの作製、及びdCas9-VP64を用いたAicda遺伝子上の転写制御領域が転写活性に与える影響を検討した。また、これらを基に、ルシフェラーゼなどの生物発光を用いたDNA立体構造の解明を試みた。しかしながら、ルシフェラーゼを導入した細胞では十分な発光強度を得ることができず、実験条件を詳細に検討する必要が考えられた。このため、本研究課題立案時に予定していた、Aicda遺伝子周辺の転写調節領域間および転写調節領域とプロモーターとが形成する立体構造の解明に至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
必要があれば、現在使用しているspCas9以外にも、saCas9など別種のCas9も活用し、引き続き、Aicda遺伝子周辺の各転写調節領域とプロモーターが形成する立体構造の解明を試みる。また、現在用いているルシフェラーゼを含む各種発現プラスミドが細胞において機能していない可能性も考えられることから、遺伝子発現時のDNA構造変化が既知であるグロビン遺伝子などに本システムを当てはめることで、実験条件が整っていることを確かめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述したように解析にやや遅れが生じており、本年度は、定常状態のBリンパ球におけるAicda遺伝子上において立体構造再構築を試みる事が出来なかった。本年度生じた残額は、この立体構造を検討するための各種コンストラクトの作製や、試薬購入に当てる予定の費用であった。研究計画全体に変更の必要性はないと考えているため、今年度の未使分は、次年度に再検討を行う際に使用する予定である。
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