膜タンパク質NADPHオキシダーゼ(Nox)は活性酸素を生成する酵素であり、消化管や肺、甲状腺などの上皮細胞において、活性酸素の生成を通じて宿主防御やホルモンの生合成などの様々な生体機能に役割を果たす。一方で、活性酸素は反応性が高く、その無秩序な生成は細胞や組織に有害である。そのため、Noxは細胞内の適切な「場所」で働く必要がある。ところが、Noxの細胞内局在がどのように制御されているのか、その分子機構はあまり検討がされていない。本研究の目的は、上皮細胞におけるNoxの局在制御機構を明らかにすることである。昨年度までに私は、Noxが上皮細胞内の特定の膜ドメインに局在するために必要な局在化シグナルおよび局在制御因子を同定していた。そこで本年度は、小胞体で新規に合成されたNoxがどのように目的地へと運ばれるのか、その輸送経路の解明を試みた。膜タンパク質の輸送に関わる低分子量Gタンパク質Rabの変異体を上皮細胞株MDCKIIに発現させて、免疫蛍光細胞染色法によりNoxの局在を検討した。さらに、新規合成されたNoxの小胞体から目的地への輸送の継時変化を観察するための実験系を確立した。その結果から、新規合成されたNoxは、ゴルジ体へ運ばれた後、リサイクリングエンドソームを介して目的地へと運ばれることが考えられた。また、その一方でNox1の一部はゴルジ体を経由しない非典型的な輸送経路を介して運ばれる可能性を示唆する結果を得ることができた。
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