本研究は、CRISPR-Cas12a(CRISPR-Cpf1)を用いたゲノム編集により、遺伝子ノックイン不要の高精度、高正確性をもつ欠失変異導入法を確立することを目的とした。代表者は、Cas12aが標的DNAの切断部位に5'突出末端を形成することに着目して、2箇所の標的配列の切断後に生じる突出末端を相補的とすることで、末端同士を結合させる正確な欠失変異を導入可能であることを見出した。 代表者は、昨年度までに進めてきた欠失導入のアンプリコンシーケンス解析を進める中で、突出末端の配列パターンが欠失導入率や正確性・不正確性に影響することを示唆する結果を得た。そこで最終年度は、突出末端のすべての塩基配列パターンの組み合わせを解析するため、ランダムな突出配列を有する突出末端配列ランダム化レンチウイルスライブラリを作製し、Cas12aをドキシサイクリン存在下で発現するHEK293T細胞へと導入した。これらの細胞についてアンプリコンシーケンスによる解析を行ったところ、(1)相補的な突出末端同士が正確に結合する割合は、突出配列に大きく依存する、(2)非相補的な突出末端同士の結合では、突出配列に依存した特定の配列が高頻度に生じる、という結果を得た。つまり、欠失導入後の結合部に生じる配列は欠失前の突出配列に影響を受けており、ランダムな修復よりも配列依存的な修復が優先されていることが強く示唆された。一方で、シーケンスエラーや、突出末端配列ランダム化ライブラリの構造的な問題によって、解析が困難であるケースがあることも判明した。今後は、バイアスの少ない条件下でより大規模な解析を進め、これらの問題を検証する必要性があると考えられた。
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