研究課題/領域番号 |
18K15057
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山城 義人 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (70751923)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大動脈瘤 / シグナル伝達 / メカノトランスダクション / 細胞外マトリクス / Thrombospondin-1 / YAP / 細胞接着斑 |
研究実績の概要 |
本研究は、血管のメカニカルストレス応答(メカノセンシング)を担う細胞外マトリクスの役割と、大動脈瘤発生の分子メカニズムを明らかにすることが目的である。大動脈瘤は血管壁が異常に拡張し、破裂・死に至る疾患である。その発生機序の詳細は不明であり、内科的治療法が確立されていない。したがって、大動脈瘤発生の分子メカニズムを解明し、治療法の開発へと結びつけることが喫緊の課題である。本研究では、細胞-基質間の相互作用を仲介する細胞外マトリクスThrombospondin-1(Thbs1)に着目し、Thbs1を介したメカノセンシング機構の解明と、Thbs1を介した大動脈瘤発生に関与するシグナル伝達経路の全貌を明らかにする。血管は様々なメカニカルストレスに晒されながら、その機能を保っている。しかし、血管壁のメカニカルストレス応答(メカノセンシング)に関与する分子の詳細と大動脈瘤発生との関わりは明らかになっていない。申請者は、細胞外マトリクスThbs1がメカニカルストレスに応答する分子であり、ヒトもしくはマウスの大動脈瘤血管壁で亢進し、Thbs1の抑制が大動脈瘤発症の抑止に効果的であることを前年度に見出した(Yamashiro et al. Circ. Res.,2018)。その成果を踏まえ、今年度は伸展刺激により平滑筋細胞から分泌されるThbs1が、インテグリンを介したシグナル伝達経路を制御することで、転写調節因子YAPの核内移行を制御しうる知見を見出した(Yamashiro et al. PNAS., 2020)。血管壁のメカノセンシング機構を明らかにした事で、大動脈瘤発生の分子メカニズム解明に向けてブレイクスルーになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) マトリセルラータンパク質Thrombospondin-1 (Thbs1) が、周期的伸展刺激によって誘導されるシグナル伝達経路(メカノトランスダクション機構)の重要因子であることを明らかにした。 (2) 周期的伸展刺激により分泌されたThbs1が、細胞膜上の細胞接着分子integrin αvβ1に結合して細胞接着斑分子を活性化し、細胞骨格であるアクチンフィラメントの張力を制御することを明らかにした。さらに、低分子量G タンパク質 Rap2 を介して、転写調節制御因子YAPの核内移行(活性化)を制御することを明らかにした。 (3) Thbs1/integrin/YAP のシグナル伝達経路は、マウスの大動脈圧負荷応答や頸動脈狭窄による新生内膜形成といった血管リモデリング時に重要な働きを担うことを明らかにした。
提案した研究計画の大部分を遂行し、標的としているThbs1を介した細胞のメカノトランスダクション 機構を見出し、PNAS誌に、論文を発表した。(Yamashiro et al. PNAS., 2020)
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今後の研究の推進方策 |
細胞外マトリクスを介した新しいメカノトランスダクション機構を見出したが、Thrombospondin-1以外の細胞外マトリクスの役割は不明であるため、その機能を精査する。また、細胞外マトリクスを介したメカノトランスダクションが大動脈瘤の発生にどのように寄与するのか、解析を行う。
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