研究課題/領域番号 |
18K15075
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
小林 直樹 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (80750728)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インスリン抵抗性 / 糖尿病 / アクチビン / FGF21 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、Activin Bによる生体への影響について検討を加え、以下の知見を得た。 アクチビンは筋分化抑制因子として知られるミオスタチンと同じファミリーであり、細胞内シグナルもミオスタチンと一部共通している。したがってアクチビンシグナルの増強によってミオスタチン様の作用が亢進した場合、骨格筋における作用が懸念される。そこで、長期的なアクチビンシグナル増強の影響を検討するためアデノ随伴ウィルスベクター (AAV) を用いて、食餌性肥満マウスにおいて肝臓特異的にアクチビンを1ヶ月程度持続的に強制発現させた(図)。その結果、除脂肪体重・筋重量・握力には影響を認めず、脂肪量が有意に低下し、耐糖能異常およびインスリン抵抗性が著明に改善した。また、皮下脂肪組織および褐色脂肪組織において、肝臓と同様にFGF21発現の亢進を認めた。また褐色脂肪組織においてUcp1やCideaなどの遺伝子発現が有意に上昇していた。これらの結果から、アクチビンシグナル増強によって懸念された筋萎縮等は認めずに代謝改善作用が期待されると考えられた。リコンビナントタンパク質投与による薬効評価も実施したが、ウィルスによる強制発現で認められたような薬効は観察できなかった。投与量が不足していることが考えられたことから、今後、投与量を増やして再検討するとともに、タンパク質の安定性を向上させるため抗体のFc領域 (Fragment crystalisable) を融合したリコンビナントタンパク質を生産し、その薬効評価を行う。また、Activin Bの生理的役割を検討するため、Inhbb遺伝子を欠損したマウスの作出を行なった。このマウスの解析は次年度以降引き続き実施する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体、とくに病態におけるActivin Bのでの作用について新たな知見を得た。主に、1) 肥満モデルにおける体重減少効果と褐色脂肪組織における変化、2) 懸念された骨格筋に及ぼす影響は小さいこと、などを明らかにした。また、遺伝子改変動物の作出に関しても進展を認めており、上記のように評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
Activin Bの生体への作用におけるFGF21の関与についてさらに検討を進める。具体的には、Activin Bの過剰発現において認められたインスリン抵抗性改善作用・インスリン非依存的な血糖低下作用および体重減少作用について、FGF21ノックアウトマウスを用いて検討する。 また、絶食時に肝臓において強く誘導されるActivin Bを欠失することで、個体のエネルギー恒常性にどのような影響があるのか、上記より得た肝臓特異的Inhbb欠損マウスと野生型マウスを比較することで、正常時および各種代謝ストレスモデル (絶食時・寒冷刺激時・肥満時・加齢など) において、血糖値を含む血中生化学値・体温・エネルギー収支・各組織における遺伝子発現解析等を行うことで検討する。
|